ひとりぼっちのラブソング

それから、わたしは凌さんのお店に行くのをやめた。

仕事中は、何とか自分を作り、元気に見せていたが、仕事が終われば、わたしの心はここにあらず状態だった。

思い浮かぶのは、凌さんの切ない歌声とギターの音色。
たまに浮かべる微笑み。
本を読む時の眼鏡姿。
お弁当を作って行ったときに「旨い。」と言ってくれたときの表情。
凌さんの演奏でわたしが歌った時のこと。

そして、わたしの"初めて"をもらってくれた時のこと。

今まで凌さんと過ごしてきた時間は、何をしていても幸せだった。

同じ空間に居られるだけで、それだけでわたしは良かったのだ。

しかし、もう来るなと言われてしまった。
もう凌さんには会えない、、、。

わたしは毎晩、凌さんのことを想っては泣き、枕を濡らしていた。



凌さんのお店に行かなくなってから1ヵ月が経とうとしていた。

わたしはこの日、仕事が休みで気晴らしに一人で街中を歩いていた。
寒くてくっつきながら歩くカップルたちが目に付く。

今のわたしには苦しい光景だ。

すると、わたしは自然とあの場所へ向かっていた。

廃業してシャッターが閉まったお店の前。
以前、凌さんが弾き語りをして居た場所だ。

わたしは凌さんが座っていた場所と同じところに腰を掛ける、体育座りをして顔を伏せた。

< 28 / 35 >

この作品をシェア

pagetop