ひとりぼっちのラブソング

放課後。
わたしは面倒くさがる麻紀を急かせて、昨日彼が弾き語りをしていた場所へ向かった。

しかし、そこに彼の姿はなかった。

「あれぇ、今日は居ない。」
「さすがに毎日はやってないんじゃない?」
「そっかぁ。」

残念そうなわたしに、麻紀は「昨日は何時くらいに居たの?」と訊いた。

「昨日はバイト帰りだったから、夜の8時半くらいだったかなぁ。」
「じゃあ、その時間帯にしか居ないのかもよ?またバイト帰りに来てみたら?」

麻紀の言葉に「そうだね!そうする!」と言ったわたしは、麻紀とコンビニで温かい飲み物を買ってから、その日はそのまま帰宅した。


そして、次の日。
この日はバイトがあり、わたしは時間を気にしながらレジ打ちをしていた。

早くバイト終わらないかなぁ。
今日は彼が居ますように。

そんなことばかり考えながら、わたしはこの日の勤務時間を過ごしていた。

時刻は20時15分。
閉店業務を終えて、わたしは「お疲れ様でした!」と先輩たちに言うと、急いで彼が居た場所へ向かった。

今日も外は寒く、わたしは白い息を切らしながら走った。

すると、あの歌声が聞こえてきた。
こないだと同じ、廃業してシャッターが閉まった店の前で今日も彼は悲しい歌を歌っていた。

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