ひとりぼっちのラブソング
「わたしの名前、覚えててくれてたんですね!」
「何でここに?」
「20歳なってから会いに来いって言われたんで、、、会いに来ました。」
わたしの言葉に苦笑いを浮かべる凌さん。
いつも無表情だった凌さんが苦笑いを浮かべている。
それだけで喜んでいる自分がいた。
「本当に来るとはな。」
そう言いながら、凌さんはギターを下ろした。
「でも、よくここが分かったな。」
「凌さんの歌声が聞こえてきたんで、それで分かりました!」
「あれから3年も経つのに、よく覚えてたな。」
「覚えてるに決まってるじゃないですか!」
わたしの言葉に困った表情を浮かべる凌さんは、「良い耳だ。」と言うと、微かに微笑んだ。
「今日、わたしの誕生日なんです!」
「そうか。おめでとう。」
「ありがとうございます!それで凌さんにお願いがあるんですけど、、、」
わたしがそう言うと、凌さんは「お願い?」と訊いた。
「はい。、、、きいてくれます?」
「何だ?」
わたしを真っ直ぐに見てくれる凌さんにわたしは言った。
「わたしの初めてを、もらってくれませんか?」
そう言うと、凌さんは一瞬「初めて」の意味が分からないような表情をしたが、すぐに「えっ?」と複雑な表情に変わった。
「わたしの初体験を凌さんにもらってほしいんです。」
「な、何言ってんだよ。」
「わたしは本気です。今日、わたしの誕生日なんですよ?わたしのワガママ、、、きいてください!お願いします!」
わたしは頭を下げて、凌さんにお願いをした。
凌さんはしばらく黙って考えたあと、「これから店を閉める。ついて来い。」と言い、お店を準備を始めたのだった。