最強ヴァンパイアに囚われて溺愛、溶かされる
はいと手渡されたのは、クマのキーホルダーがついているスマホ、私のものだった。
横目で彼を見れば何を考えているのか、分からない顔をしている。けれど堂々としていて、嘘をついているようには思えない。
先程かけた履歴から、お母さんの欄をタッチする。
…私は、お母さんを信じる。
ブルルルという着信音にこれほどまでに緊張するのは初めてだ。
1コール…2コール……3コール
出ない…今何時なんだろう…もしかして寝てる?
6コールまで鳴ったときだった。
プツリ、
『もしもし、どうしたの…こんな夜中まで起きて。何かあったの?』
眠っていたのか少し低いお母さんの声。
落ち着かずバクバクと鳴る心臓を誤魔化すために、ごくりと唾を飲み込む。
「もしもし、お母さん……いきなりだけど、聞きたいことがあるの…」
『聞きたいこと?何?』
「私、じつは、恋慕のヴァンパイアの血があるんじゃないの?」
「そうよ。」
嘘でしょ…
あっけらんと伝えられる、その肯定は重すぎる。
「何で…何で黙ってたの!」
『そんか事知ったってどうしようもないでしょ。』
「どうしようもないって…」
そこまで言ってはっとする。
憤る頭の中、一つ思い当たることがあったからだ。
「もういい…大丈夫。」