最強ヴァンパイア達の溺愛が重すぎる
ポタリと地面に一粒涙が落ちた時だった。
「大丈夫?」
ぽんと肩に手がのせられた。
低くて、でも安心する声。
どこかで聞いたことのある…
はっとして後ろを振り返れば、ぱちりと"彼"と目が合う。
そこにはこの世の物とは思えない、端正な顔をした男の人がいた。
鼻は高く通っており、目尻にあるホクロは色気すら感じさせる。
でも、そんな中で視線が固定されたように動けない。彼の目は紅色だった。
"高貴なヴァンパイアの血筋は、目が紅色"
こんな状況すら忘れて、惚けてしまう。
「あれ、結構やばい…?」
「だ、大丈夫です!」
気持ち悪かったけれど、ブンブンと頭を無理に振るしかない。
この人、綺麗すぎる…
目を合わせていれれなくて、一刻も早く私から逸れて欲しかった。
そう。なら良かった。静かに言って立ち上がった彼はその長い足で威圧の張本人に真っ直ぐ向かっていく。
「は?お前なんだよ…うっ、」
そのまま、男の頭をがしりと掴んだ。
かなり強い力なのか、男の金髪がぐしゃりと乱れている。
「…くそっ…何すんだよ…」
「……帰ってもらえますか。」
先程の声とは程遠い、深海のように冷たい声。
私まで一ミリも動けないほどの緊張、恐怖を感じた。
彼が手を離すと同時に、ばたりとナンパ男が膝をつき、地面に四つん這いになるまで疲弊していた。
彼が今、威圧を使ったの?
私は何も感じなかったけれど、男の様子から見れば明らかだ。
男は、そのまま、わなわなと震えたと思えば逃げるように小走りで走り去ってしまった。