【不定期更新】甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
それでも……


「質問はないです……」


「いいの?」


「質問はないけれど、もう一つ私のことを教えてもいいですか?」


ドッ、ドッ、と心臓が速くなるのが自分で分かった。



「前に言った通り、これでも出張が多めの仕事なんです。いつも一人で新幹線で漫画を読んでた。それも凄く楽しかったけれど、いま誰かとこうやって話しているのも結構楽しい……です……」



段々と弱気になって、声が小さくなってしまう自分が嫌になる。

そんな私を見て、何故か時哉さんは余裕そうに「俺も今、楽しい」と返した。

そんな時哉さんはやっぱり「どこかズルくて」。


新幹線はもう少しで目的地に到着する。


夢のような……というか、不思議な出張がこれで終わる。

連絡先は知っていても、次の約束はまだなくて。


「ねぇ、奏葉」


私は、「次、いつ会える?」と聞かれるのかと少しだけ期待した。
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