第二幕、御三家の嘲笑
「お前にも話さなかったか? 今回、クラスマッチにかこつけて御三家と生徒会の上下関係をはっきりさせようとしていると」

「生徒会が、だろ? 聞いたよ、お陰でうちのクラスにいるバスケチームは一般生徒か元いじめられっ子ばっかだ」


 そう言われて、二年四組の男子バスケチームを思い浮かべる。思い出した面々は間違いなく一般生徒だ。中には、赤井くんの言動に日々虐げられている人もいる。同じように、私とテニスで組んでいた八橋さんも多分一般生徒だ。希望役員の飯田さんの発言の影にさえ隠れてしまいそうなほど大人しい人だし。この間月影くんが話していた通り、今回は御三家と生徒会の対立構造が意識されている。


「俺のチームも似たようなものだ」

「じゃあ俺とお前が二人共バスケなのは生徒会にとっちゃ思い通りのシナリオじゃないってわけだよな」

「当然だ。だから赤井に野球に出ろと言われなかったか?」

「あー、そういえばんなこと言ってたな……」

「一般生徒はある程度生徒会役員の指示でチームを固めたそうだ。俺達が従わないせいで完全に予定通りとはいなかったわけだが」

「好きだねぇ、アイツらも。じゃあコイツは? 御三家(こっち)の頭数に入ってたのか?」


 桐椰くんが、初戦敗退の私を指し示す。さっと目を逸らすと、月影くんの鼻で笑ったような声が降って来た。


「当然だろう。女子テニスには蝶乃がいた」

「うわぁ。当たらなくてよかった」

「今頃悠々とお嬢様テニスでもしてるんじゃないか? 生徒会副会長の肩書があれば不戦勝の連続のようなものだ」


 ん? いま言われたことが理解できなかった。じっと月影くんを見上げて解説を待つ。やっぱり小馬鹿にしたような目で見られた。


「君は馬鹿か? 花高に転校して三カ月、一体何を学んだ」

「……生徒会至上主義」

「その通りだ。生徒会に虐げられるのは誰だ?」

「一般生徒?」

「一般生徒の中でもどんな生徒だ?」

「えーっと……」


 分からない。私が対象になったのは、相手が生徒会役員とは知らず謝罪を要求したからだ。桐椰くんがこの間カツアゲを止めているのを見つけたけれど、その男子生徒は「一般生徒なんだから仕方ない」と暗い表情でぼやくだけで、特別何かをした心当たりなんてない様子だった。


「なんとなく気に食わない生徒……とか?」

「その通りだ」

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