第二幕、御三家の嘲笑
「えっ」


 共通項が見つからずに適当に出した答えだったし、月影くんからはどうせまた罵られるんだろうなと思っていたのに、思わぬ回答に頓狂な声を上げた。


「何をそう驚く?」

「だ、だってそんなの理不尽じゃん……」

「何を言ってるんだ。そもそも、寄付金の多寡で地位が決まり、上の者は下の者を虐げることが許される制度自体が理不尽だろう?」


 私の感想は今更に過ぎるもので新鮮味の欠片もないと言わんばかりの声だった。そして、確かにその通りだ。


「生徒会という組織を差し引いても、気に食わない者を気に食わないという理由だけで吊し上げることはよくあることだ。君だって見た経験がないわけではないだろう?」

『ねぇ聞いた? 幕張さんって、実は――』

「そうだけどさ……」


 月影くんの言葉は、正しい。なんなら見た経験ではなくてされた経験もあるくらいだ。もう暫く前の話ではあるし、やや褪色(たいしょく)した記憶ではあるけれど、今でも思い出せば気分の良いものではない。思わず表情を曇らせてしまう。


「そこで、だ。いつ標的になるか分からない一般生徒としては、できるだけ悪目立ちしたくないと考えるのが普通だろう? 生徒会役員の(しゃく)に障るような行動は猶更だ」


 そこまで言われて漸く気が付いた。元々話していた、蝶乃さんが不戦勝のようなものだという話は、そういうこと。得心のいった表情になってしまったのか、月影くんは私の顔を見ながら頷いた。


「あぁ、そうだ。余程空気の読めないものでなければ、あの癇癪持ちの高飛車な女との試合で本気を出すことなどしないだろうな」


 花高は、思った以上に腐っているようだ。クラスマッチ一つでさえ生徒会の思うがまま。


「だから、チーム戦では御三家(おれたち)が圧倒的に不利だ。チームメイトの一般生徒で、生徒会役員を含んだチーム相手に本気を出して勝とうと思うヤツがどれだけいるか? 今回のクラスマッチは、建前はともかく、御三家にはなんの権力もないことを知らしめるようなものだ」


 その分析に、おそらく間違いなどない。きっとクラスマッチの目的はそこにある。


「……ねぇ、今回の……その、クラスマッチを御三家対生徒会って銘打ったのって、誰なんだっけ……」


 だからこそ、唖然とせずにはいられない。


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