第二幕、御三家の嘲笑
「鹿島生徒会長だ。要望を出したのは他の生徒会役員だと聞いているがな」


 それがどうかしたか?と月影くんはなんでもないように眉を顰めるけれど、どうしてか、言いようのない不安で震えてしまった。

 だって、あんまりにも出来過ぎている。御三家と生徒会役員、それぞれのメンバーのスペックがどうあろうが、結局生徒会が勝てるのが決まっている。それは花高において生徒会が力の在り方を示し続けて来た結果だ。個人プレーでもしなければそれを覆すことはできないのに、クラスマッチは殆どがチームプレイ。桐椰くんの運動神経が良くて、月影くんがバスケだけは得意でも、他のメンバーが生徒会の標的になることを恐れて実力を発揮しなければ同じことだ。唯一、テニスは個人競技でも、そこにはインハイ出場経験があるほどの実力者・鹿島くんが待ち構えている。御三家の誰が挑んだって、いくらなんでもそんな人には勝てない。つまり、名実ともに、今回のクラスマッチは御三家の負けることが決まっていたということだ。クラスマッチを御三家VS生徒会と銘打った時点で出来上がっていたシナリオ。計算済みの対抗戦。それを考えたのが、例えば萩原くんというのなら、随分頭が回る人なんだなぁで終わった。でも、考えたのは鹿島くんだ。あの、得体のしれない、生徒会長の鹿島明貴人――。


「で、話変わるけど、総は?」


 桐椰くんの言葉ではっと我に返る。考えすぎるのは、やめておこう。表情に出て、鹿島くんとの関係を――私も知らないけれど、少なくとも私が幕張匠だと知っていることを――知られたら、困る。


「試合あるってことは勝ってんだろ?」

「あ、うん……。次は鹿島くんと当たるらしいよ」

「へぇ、んじゃアイツ、二回戦敗退か。はぇーな」


 桐椰くんから見ても松隆くんが負けることは確定……。いつもの調子に戻るよう自分を落ち着かせてしまえば、なんだかつまらない一日になりそうでつまらない気持ちになる。頬を膨らませるとせせら笑いを向けられた。


「なんだよ、総が負けるの嫌なのか?」

「だってさー、つまんないじゃん。生徒会が勝つことが決まってる一日なんてさ」


 別に、それは松隆くんでも桐椰くんでも、月影くんでも同じことだ。結果の見えてる勝負に面白さなんてない。外野にとっては猶更。


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