第二幕、御三家の嘲笑

(三)切に望んだ虚栄

 昼食の時間、なんとなく桐椰くんと顔を合わせづらくて、こそこそと体育館までサンドイッチを持って行って食べた。中にはいい席を陣取っておくために体育館でお昼をとる人もいたから幸いにも浮きはしなかった。ついでに、松隆くんの試合を眺めていたせいでお昼の時間はあまり長くなくて、のんびり食べていれば二年四組と二年一組の試合が始まるまで時間を潰す必要もそうなかった。いい席をとった女子達が「桐椰くんと月影くん、どっちにする?」「月影くんかなぁ、やっぱ普段知ってるからバスケできると余計ぐっとくる」「わかるわー」と談笑している。残念ながら私は桐椰くんとの気まずさに悩むしかできない。


「もー、月影くん何で試合なのー」


 相談に乗ってよー、と、椅子の上でした体育座りの膝に額を押し付ける。松隆くんも同じような答えは出してるって言ったって、あの松隆くんにそんなことを相談できるわけがない。松隆くんは表情と言葉と内心が全てバラバラに動くとんでもない人だ。月影くんは多分心にもないお世辞とか言えない人だし、きっと合理的に正しそうなアドバイスをくれるはずだ。私のことは好きじゃなくても桐椰くんのことは大好きだろ月影くん!

 とはいえ月影くんに恋愛相談するのも意図的人選ミスの感が拭えない……。八方塞がりじゃん、私に女の子の友達いないし。部外者として想定される友達に雅はいるけれど、雅はそれこそ私怨で解答しそうだから何も言えない。顔を上げて頬を膨らませた。二年四組と二年一組が整列し始めている。


「桜坂」

「ギャッ」

「なに、その返事。傷付くなぁ」


 急に聞こえた松隆くんの声に飛び上がれば、苦笑いする松隆くんが隣に座った。


「傷付いてもないくせにそういうこと言わないでください」

「桜坂はどっちが勝つと思う? 応援ではなく」


 無視だ。鹿島くんに負けたショックが本物だったのかどうか分からないけれど、取り敢えず今の松隆くんは通常運転で、狭い肘掛けに器用に肘をついていた。よし、試合直後の松隆くんの言動は忘れよう。


「さぁ、どーなんだろ? 私、バスケ分からないから見比べてもどっちが上手いか分からないし」

「ま、俺もその点は知らないけどね」

「御三家でバスケとかしないの?」


 丁度3on3できるじゃん、と言えば「確かに蝶乃が男だったら丁度生徒会とできるね」とゆったりと興味なさげな声が返ってきた。もしかして鹿島くんに負けたのをまだ気にしてて生徒会というワードが地雷なのだろうか。だとしたらこの話題はやめておこう。
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