第二幕、御三家の嘲笑
 くすくすと、可笑しそうに松隆くんは笑った。


「この間の帰り道、俺達はいつ知り合ったんだって話しただろ?」

「あ、うん」


 松隆くんが今みたいに笑いながら話そうとして月影くんに遮られたヤツだ。


「駿哉と遼が友達になって、俺と遼が友達になったんだけどさ」

「……月影くんと桐椰くんの接点やいかに」

「言っとくけど、駿哉の性格は昔からあれだから」


 自信家かと思えば謙虚だし、冷徹かと思えば友達大好きだしファザコンだし、何よりあの喋り方――文語チックな言い回しが昔からだというのなら、それは多分所謂変人だ。


「まぁ……分かるだろ? 虐められやすいって」

「……まさか、それを助けたのが桐椰くんとでも言うんですか……?」


 一生懸命観戦してたのに、あまりに気を引く話を続けるものだからつい試合から視線を外してしまった。そして松隆くんは声を上げて笑いながら「そのまさかだよ」と衝撃の事実を告げる。思わず間抜けに口を開いてしまった。


「……確かに、今でも素直な桐椰くんは虐めとか見かけると真っ先に間に飛び込んじゃいそうだけど」

「だろ?」

「やめろよ!とか言って体張っちゃいそうで……ぷっ」


 そして想像して笑ってしまった。月影くんを庇う桐椰くんなんてすぐに目に浮かぶ。


「その日から駿哉と友達になってさ。でもって、駿哉は遼に返せない借りがあるとか思っちゃってるわけ」

「うわー、月影くんらしい。義理堅い」

「まーね。ま、彼女に関しては俺もさっさと作ればいいとは思うけどねぇ」


 アイツ、持て余した優しさ振り撒いちゃってんじゃん、と呆れた声が付け加える。桐椰くんは振り撒かないと溢れて無差別に撒き散らかしてしまう優しさゲージみたいなものでもあるのかな。ついでに桐椰くんはそう優しさを振り撒いてはいない。本当に優しさを振り撒いて行き過ぎたのは彼方みたいなのを言うのだ。


「で、彼女できてほしいって駿哉が言うから初恋の人探そうって?」

「ううん、今のは純粋な興味で聞いたんだけど」


 あぁでも……、月影くんの予想が正しいというのなら見つけたほうがいいのかもしれない。桐椰くんはきっと彼女を大事にするし、いい彼氏になるのかは (彼方の弟だということを考えると)分からないけれど、彼女の言葉はうんうん聞いてくれそうだし。

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