第二幕、御三家の嘲笑
 自炊から連想して、文化祭が終わった頃に誘われた夏の予定を思い出した。今現在、御三家と私とは『御三家+一匹』という珍妙なグループLIMEで繋がっている。招待されたので入ってみたものの、未だに動いていない。


「別荘って言わなかったっけ」

「地名を聞いてます」

「あ、海水浴できるよ。水着なかったら俺の趣味着せるね」

「それセクハラじゃないんですかリーダー!!」


 もうイヤだ。松隆くん、飄々とはしててもこんな軽口を叩く人じゃなかったのに。めそめそとなくふりをするも松隆くんは無視。代わりに少しだけ身を乗り出して試合を観戦している。


「一組勝ちそうだね」

「えっ」


 クラスマッチのバスケは第二クォーターまでしかない。第一クォーターから一組優勢だったし、今も一組優勢となれば、残り二分の間にひっくり返ることはおそらくない……。挙句の果てにスコアが28‐16となれば頬もひきつるというものだ。四組のスコアが前半から殆ど伸びてないだと……。もしかして月影くんの出した指示はオフェンス・ディフェンス共に適切だったとでもいうのか。いや、どうやらそれだけではない。ボールを持つ月影くんと桐椰くんが丁度向かい合って対戦中だったのだけれど――最早普段からは想像できない姿に唖然としてしまう――月影くんがフェイントをかけて桐椰くんを抜いた。四組メンバーだって開いた口が塞がらないに違いない。普段勉強しかできなさそうなくせに、運動神経の塊みたいな桐椰くんに勝つなんて。


「四組! ちょっと頑張って! 私の人権かかってるから!」

「桜坂、後期も人権なし、と」

「しかも後期丸々なの!? 大体『も』ってことはやっぱり前期に私の人権無視してる自覚あたよね! そして一個だけだよねお願いは! 松隆くん、三つまでお願い聞いてくれる魔法のランプにまず無限にお願いを叶えることを要求するタイプでしょ!」

「その通りだよ」

「こんなに心底桐椰くんのこと応援したくなったの初めてだよ!」

「長いツッコミお疲れ様」

「本気で自分の心配してるんだよ私は!」


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