第二幕、御三家の嘲笑
 もう月影くんが――一組が勝利すると信じて疑わない悠々とした態度。今から逆転劇が起こらないかと拳を膝の上で握りしめ、思わず桐椰くんに着目する。丁度ボールを持ったせいもあったけれど、何より多分一番の得点源だからだ。その桐椰くんはなぜか唐突にコートの中途半端な位置で止まった。そのまま、ゴールよりも遥か遠い位置からボールを投げる。会場が息を呑む。シュッ、とボールはゴールを(くぐ)り、笛の音が鳴った。


「桐椰くんってスリー打てたんだ!」

「……まぐれだね、あれは」


 フォームもめちゃくちゃなのにぶっつけ本番で打つなんて、運動神経のイイヤツ。そう松隆くんは呟いたけれど、一気に三ポイント捲られた四組の士気がぐっと上がるのが遠目にも分かる。ついでに月影くんは舌打ちしたように見えた。多分松隆くんと同じことを思っているんだろう。


「その調子で頼むから追いついてくれないかな」

「そんなに人権失うのやだ?」

「嫌だよ? なんでそんな珍しそうに言うの? 大抵の人は人権手放すの惜しむと思うよ? ……あっ」


 私の願いに反して、四組終了の図が見えた。桐椰くんがスリーポイントを決めた後に月影くんが素早く何か指示を出したと思ったら桐椰くんに二人マークがついていた。四組の得点源に橋爪くんもカウントできるけれど、月影くんの対応に追われて (なんなら月影くんにあっさり抜かれて)得点なんてできない。一組には元々バスケ経験者だか運動神経猛者だかが集まっていたらしく、桐椰くんのマークでも力不足なく、元気に動き回っていた金髪が大人しくなってしまった。


「……松隆くん」

「何?」

「……一組にバスケ経験者何人いるか知ってる?」

「現役バスケ部員二人、経験者は制限がないから駿哉を含めて三人」

「どうりで強いはずだよ! しかも知ってたんだよね! 一組が勝つって分かってたんだね!」

「ついでに駿哉がバスケに関してはスロースターターってこともね」

「本当に松隆くん性格悪いよね!」


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