第二幕、御三家の嘲笑
 そうこうしている内に二年一組と三組の試合が始まる。三組が私達側に向いて整列したのだけれど、私には萩原くんの顔が分からない。


「ねぇ、萩原くんってどれ?」

「右から二番目。黒いスポーツ刈りの眼鏡だよ」


 松隆くんの言う通りの特徴の男子が六番のゼッケンをつけて並んでいた。顔はよく見えないけれど、舞浜さん達に言わせれば正統派のイケメンらしい。


「鹿島くんの腹心っていうからもっと文化系の見た目した人だと思ってた」

「ま、身体は小さいよな。でもバスケ経験者だ」

「……ねぇ松隆くん」


 桐椰くんのいう、萩原くん自身がバスケ経験者かどうかなんてどうでもいい。問題はメンバー構成だ。少なくとも一組に生徒会役員がいないのは御三家の一人がメンバーに含まれていることから明らか。


「三組のメンバーのうち、生徒会役員は……」

「十一番以外の四人全員。指定役員、指名役員、指名役員、希望役員と豪華な面々さ」


 皮肉げな松隆くんの表情と桐椰くんの舌打ちが答えを教えてくれる。


「あぁ、試合になんねぇじゃん」


 ジャンプボールの時点で、一組の動きは四組との試合と全然違った。まるで様子を窺うように(のろ)く、月影くんの指示も通る気配はなく、パスを回すばかりで月影くん以外が点を取ろうとする気配はない。一方で三組はやりやすそうだ。積極的にオフェンスもディフェンスもしない一組なんて怖くないとばかりにコートを走り、唯一月影くんにだけ妨害されるものの、パスで乗り切れば済んでしまう。月影くんなんて味方にパスもできない。下手にパスをすれば三組と共謀しているのかと思ってしまうほど易々とボールを奪われたり、ボールを取られるのを待つようにパスを回すだけで時間を稼ごうとする有様が今しがた映し出されたばかりだ。


「こういうのが楽しいのかねぇ、生徒会のメンツは」


 冷ややかな桐椰くんの声で文字通り唾を飲む。あぁ、本当に、月影くんの言った通りだった。生徒会役員で固められたチーム相手に、一般生徒しかいないチームがまともに戦うわけがない。それはきっと御三家がいても関係ない。だって――。


「俺達は、桜坂しか守らないと公言してたからね」


 ハイエナ掃除が裏目に出た、と松隆くんが苦虫を噛み潰す。笛吹さん事件のことだ。


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