第二幕、御三家の嘲笑
「文化祭から今まで、御三家の株は上げてきたつもりだったけどな。」

「それでも桜坂一人にできることと他の一般生徒にできることは違う。それを生徒会も一般生徒も分かってるわけだ」

「必ず助けてくれるわけじゃないなら、御三家の支持は口先と匿名――生徒会に気付かれない限りで、ってことか。ついでに、俺達が助けるなら有り難く好意は頂戴するけど、自分達でどうにかする気はさらさらないってことだな」


 御三家のスタンスを逆手にとって、まるで嘲笑うように、試合にならない試合を御三家の一人と繰り広げてみせるその様。生徒会役員で固められた三組の誰かが一組のメンバーに忠告したのか、それとも一組のメンバーが物分かりのいい態度をとっているかは分からないけれど、いずれにせよ、その試合は花高のヒエラルキー構図を凝縮していた。


「流石にこれは、気分が悪いね」


 月影くんが試合に出ているからか、ただ単純に不愉快な試合を見せられているからかは分からないけれど、松隆くんの地を這うような声が告げる。コートにいる月影くんは、一人でプレイしていると言っても過言ではないほど奮闘して、それでも得点できない自分に苛立つように膝に手をついていた。

 結局、二年一組も生徒会役員会計萩原くん率いる二年三組に負けてしまった。

 全クラスマッチが終わって表彰が始まってみれば、鹿島くんもテニスで優勝を収めていた。ただ、女子テニスの優勝は蝶乃さんではなかったし、桐椰くんに照会したところ生徒会役員でもなかった。どうやら一般生徒の中にも根性のある人は残っていたようだ。でも一般生徒の優勝はそれくらいで、その他の競技は男女問わず生徒会役員率いるチームが独占。そして御三家は――私をカウントしたとしても――準優勝すら許されず敗北。


「御三家も大したことねぇなぁ」


 表彰中、御三家を好いていない生徒達がそう笑った。赤井くんも同じようなことを言っていたけれど、桐椰くんは何も言わないし手も出さなかった。

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