第二幕、御三家の嘲笑
 でも、これは私のせいだ。ゆっくりとウエストのリボンを解いた。背中のチャックに手を伸ばしたけれど、震える指先では上手く掴めなかった。興味津々に目の前に立つ男達の前で、ぐっと目を瞑って――おそるおそる、チャックを下ろした。背中がすうすうする。元々半分透けていた肩の肌色が露わになったのが自分でも分かる。緊張で息を吸えばその喉すら震えていた。普段着替えるときなら滑り落して終えるワンピースを、ゆっくりと、体から抜いた。今日のキャミソールはレモンイエロー、下着はちょっとだけ透けている。

 ひゅう、と誰かが上手な口笛を吹いた。脱いだワンピースを体の前で抱きしめる。今、これ以上何もしないでいることはできない。


「へーぇ! へぇ、マジで脱ぎやがった。アンタ、物分かりいいなぁ」

「早く、御三家に写真送ってよ」

「その服寄越したらな」

「脱ぐだけって約束だった」

「……あぁ、こりゃ失敬」


 雅の揚げ足をとっただけあってというべきか、リーダーの男はそれで了承した。私のスマホがちらついたのを見て、腰が砕けて、その場に座り込んでしまった。おそるおそる見た足までが痙攣するように震えていた。横に立っていた男子がロープ片手に「ほら手貸せよ」と拘束を要求してくる。大人しく両手を揃えて差し出せば、するりとワンピースが床に落ちて、背筋が震えた。そうか、要求されたのは服を脱ぐだけでも拘束しないとは言ってない。私もまた揚げ足をとられたようだ。手出せよ、と言われて前に差し出せばその手を縛られる。待ちわびたように鳴ったシャッター音に目を瞑ってしまいたくなる恐怖をぐっと堪えた。スマホの青白い光に照らされた男が二人、きっと私のLIMEを見て笑っている。


「『御三家+一匹』ってなにそれ」

「……いいからそこに送って」

「可愛くねー女……」


 送信っと、と一人が言った。ややあって「既読つかねーじゃん」とがっかりした声が聞こえる。


「ここの住所も送ってよ」

「あー、はいはい」


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