第二幕、御三家の嘲笑
「……君の妹は、少なくとも母親が別だからだ」
――どくん、と心臓が鼓動した。
「その事実に気がついたのは、本当に何気ない会話だった。総が君を家に送るのに偶々一緒に行った日があっただろう。あの時、君の妹に会ったな」
「その時に、顔が似てないって?」
「違う、その逆だ」
不躾な真似をしてすまないと、その表情に謝られている気がした。
「君達姉妹は顔のパーツが似ていた。だから姉妹という肩書以上に血縁関係を感じた。だが、同じ母親で有り得なかった。……あの日、君は妹にもうすぐ誕生日だろうと話していた。君が三月二十八日生まれだというのに、七月中旬のあの日、もうすぐ誕生日だと言ったんだ」
――あぁ。今度は私が自嘲する番だ。
正解だ。わざわざ教えなければ知るはずのない、それは、まごうことなき事実だ。松隆くんと月影くんに食い付いた優実の注意を逸らすために咄嗟に口にした話題で月影くんにバレてしまうなんて。
「……だが、俺にとってそんなことは――君に対する印象なり信用度なりを左右する事情ではない。だから詮索するつもりもなかったし、調べるつもりさえなかった」
「じゃあ松隆くんは知らないんだ……」
「あぁ。あの時にアイツは顔色ひとつ変えずに別の話を――先程話した菊池の話をしていた。声の調子が変わることも、詰まることもなかった」
つまり、月影くんは、私と優実が異母姉妹であると気付き、更に松隆くんから雅の不審さを聞いた。当初は異母姉妹以上のことは分からず、桜坂という姓は元々私と優実両方に与えられたものだと思ったのかもしれない。でも、雅のことを調べている内に、私の苗字は違ったのではないかという可能性に――その確率の高さに――気が付いてしまった。
「だが、その話は、君と幕張匠を結びつける直接の証拠ではない……。菊池を調べていたときのことについて、俺の友達は、先ほども言ったように君のことを覚えていなかった。かつ、菊池には仲良しそうに見える女子はいたがアキという名前の女子ではなかったと断言した」
菊池の取り巻きの女子はあまり好きではない部類だから反って名前を覚えてしまったと話していたのだが、この皮肉は余談だな、と月影くんは続けた。
――どくん、と心臓が鼓動した。
「その事実に気がついたのは、本当に何気ない会話だった。総が君を家に送るのに偶々一緒に行った日があっただろう。あの時、君の妹に会ったな」
「その時に、顔が似てないって?」
「違う、その逆だ」
不躾な真似をしてすまないと、その表情に謝られている気がした。
「君達姉妹は顔のパーツが似ていた。だから姉妹という肩書以上に血縁関係を感じた。だが、同じ母親で有り得なかった。……あの日、君は妹にもうすぐ誕生日だろうと話していた。君が三月二十八日生まれだというのに、七月中旬のあの日、もうすぐ誕生日だと言ったんだ」
――あぁ。今度は私が自嘲する番だ。
正解だ。わざわざ教えなければ知るはずのない、それは、まごうことなき事実だ。松隆くんと月影くんに食い付いた優実の注意を逸らすために咄嗟に口にした話題で月影くんにバレてしまうなんて。
「……だが、俺にとってそんなことは――君に対する印象なり信用度なりを左右する事情ではない。だから詮索するつもりもなかったし、調べるつもりさえなかった」
「じゃあ松隆くんは知らないんだ……」
「あぁ。あの時にアイツは顔色ひとつ変えずに別の話を――先程話した菊池の話をしていた。声の調子が変わることも、詰まることもなかった」
つまり、月影くんは、私と優実が異母姉妹であると気付き、更に松隆くんから雅の不審さを聞いた。当初は異母姉妹以上のことは分からず、桜坂という姓は元々私と優実両方に与えられたものだと思ったのかもしれない。でも、雅のことを調べている内に、私の苗字は違ったのではないかという可能性に――その確率の高さに――気が付いてしまった。
「だが、その話は、君と幕張匠を結びつける直接の証拠ではない……。菊池を調べていたときのことについて、俺の友達は、先ほども言ったように君のことを覚えていなかった。かつ、菊池には仲良しそうに見える女子はいたがアキという名前の女子ではなかったと断言した」
菊池の取り巻きの女子はあまり好きではない部類だから反って名前を覚えてしまったと話していたのだが、この皮肉は余談だな、と月影くんは続けた。