第二幕、御三家の嘲笑
松隆くんが立ち上がれば、桐椰くんも雅も立ち上がる。帰る方向は雅も途中まで一緒だ。ただ、松隆くんが特別気にかけてくれる様子はない。
「……雅」
「何か話すことあるの、桜坂」
否――それどころか、会話すら許さないほどに冷然と言い放たれ、思わず月影くんの陰に隠れてしまった。月影くんは眉を吊り上げる。なんで俺なんだ、と言いたげだけれど、月影くんだけが今回の事件の裏ともいうべきことを知っているのだから月影くんを選んでしまった。そんなことを知ってか知らずか、松隆くんの目がじろりと私を見下ろす。
「自分が何されたか分かってる? 負い目が云々って言うならコイツが言った通り、〝お互い様〟だよ。だったらもうこんなヤツと関わる必要なんてない」
「……それは松隆くんが決めることじゃない」
「そうだね。たかだか頬を殴られた程度の俺が口を出すことじゃないね」
「総、やめてやれ」
私一人で何もできなかったのは事実だ。何も言い返せずに口を噤めば、月影くんが呆れた声で仲裁してくれる。そんな月影くんに対してさえ、松隆くんは冷ややかな表情を向ける。
「俺は何も間違ったことは言ってない。桜坂がコイツとまだ仲良くやれるって言ってること自体頭がおかしいが、それでも納得できるとしたら今回は最悪の事態にはならなかったからだ。次はどうなる? 俺達が四六時中菊池を見張るのか? 冗談じゃない」
「……雅だってしたくてしたんじゃない」
「あぁ、そうだな。菊池が鬱陶しがってたのは俺達だけだ」
口調がやや荒々しくなっている。松隆くんの怒りが沸々と込み上げているのがよく分かった。
「それでも、桜坂を危険に晒したのは事実だ。よっぽどの馬鹿でない限り、桜坂には関わらないと自分から誓うべきだ」
「そんなこと私がしてほしくない」
「甘いんだよ、桜坂は。次がないと何故言い切れる? 馬鹿は同じことを繰り返すぞ」
雅は黙っている。自分が口を挟めば松隆くんが余計に怒ると分かってるからだろう。月影くんの表情は見えなかったけれど、一歩前に出ればほんの僅かに困ったような顔をしていた。下手に知っていることがあるから雅の行動を否定できないのだろうか。それなら、いいけど。
「……雅」
「何か話すことあるの、桜坂」
否――それどころか、会話すら許さないほどに冷然と言い放たれ、思わず月影くんの陰に隠れてしまった。月影くんは眉を吊り上げる。なんで俺なんだ、と言いたげだけれど、月影くんだけが今回の事件の裏ともいうべきことを知っているのだから月影くんを選んでしまった。そんなことを知ってか知らずか、松隆くんの目がじろりと私を見下ろす。
「自分が何されたか分かってる? 負い目が云々って言うならコイツが言った通り、〝お互い様〟だよ。だったらもうこんなヤツと関わる必要なんてない」
「……それは松隆くんが決めることじゃない」
「そうだね。たかだか頬を殴られた程度の俺が口を出すことじゃないね」
「総、やめてやれ」
私一人で何もできなかったのは事実だ。何も言い返せずに口を噤めば、月影くんが呆れた声で仲裁してくれる。そんな月影くんに対してさえ、松隆くんは冷ややかな表情を向ける。
「俺は何も間違ったことは言ってない。桜坂がコイツとまだ仲良くやれるって言ってること自体頭がおかしいが、それでも納得できるとしたら今回は最悪の事態にはならなかったからだ。次はどうなる? 俺達が四六時中菊池を見張るのか? 冗談じゃない」
「……雅だってしたくてしたんじゃない」
「あぁ、そうだな。菊池が鬱陶しがってたのは俺達だけだ」
口調がやや荒々しくなっている。松隆くんの怒りが沸々と込み上げているのがよく分かった。
「それでも、桜坂を危険に晒したのは事実だ。よっぽどの馬鹿でない限り、桜坂には関わらないと自分から誓うべきだ」
「そんなこと私がしてほしくない」
「甘いんだよ、桜坂は。次がないと何故言い切れる? 馬鹿は同じことを繰り返すぞ」
雅は黙っている。自分が口を挟めば松隆くんが余計に怒ると分かってるからだろう。月影くんの表情は見えなかったけれど、一歩前に出ればほんの僅かに困ったような顔をしていた。下手に知っていることがあるから雅の行動を否定できないのだろうか。それなら、いいけど。