第二幕、御三家の嘲笑
 ……守ってくれる? 当然のような台詞に目をぱちくりさせると、「何を驚いた顔をしてるの」と呆れた声を掛けられる。


「文化祭が終わった日に言った通りなんだから、別に何も変わらないだろ。俺達は桜坂を守ってやる。代わりに──」

「今の私が差し出せるものなんてないよ?」


 そう、御三家と私との今の関係は謎だ。文化祭が終わった日、契約は完了した。卒業まで一緒にいてくれると言われて、居場所を貰えたという嬉しさのあまり考えずにいたけれど、利害のない関係なんて不安定といってしまえばそこまでだ。つい数日前のことだって、そこまでして守ってくれる理由なんてどこにもなかった。冷静になると途端に不安になって問い質してしまったけれど──松隆くんの怪しい笑みを見てしまい、失言をしたと気が付いた。


「何言ってるの、桜坂。桜坂に差し出せるものはいくらでもあるよ?」

「やめて! 人権は奪わないで!」


 そうだ、この腹黒リーダーが利用価値もない私をタダで傍に置いておくはずがない。慌てて身構えてしまうけれど「人権は半分冗談だよ」とまさかの半分本気の返事がされた。


「九月に何があるか知ってる?」


 九月……。文化祭はもう終わったし……。ふむ、とさして興味も持たずに見た年間行事予定表を頭の中に思い浮かべる。


「あ、体育祭がある」

「あぁ、それもあったね。うちは文化祭に金かけてるから体育祭は手を抜いてるよ。夏休み明け一週目の土曜日だから、ほとんど練習もしないし」

「あ、そうなんだ。暑いの嫌いだからそれいいね」

「寧ろ九月のメインイベントは生徒会役員選挙だね」


 台詞と共に、ニッ、とその口角が吊り上る。


「生徒会役員選挙……」

「そう。選挙活動は結構見物だよ。金かけて写真撮ってポスター作ってるし」

「……それと松隆くんってどう関係するの?」


 だって御三家は生徒会役員になる気なんてないだろうし……。月影くんは生徒会長も似合うけど、松隆くんが生徒会長なんて恐怖政治開始みたいで怖いしなぁ……。桐椰くんはそんな柄じゃないし。


「この間のクラスマッチ、流石にイラついてね。潰してやろうかなって気にならないことはないよ」

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