第二幕、御三家の嘲笑
 ペンケースが陳列された場所にやってきながら、桐椰くんの言動を思い出す。桐椰くんは、それ彼女じゃない人にもやる!?みたいな言動が少なくない。絶対に数多の勘違い女子を生み出している。せめてもの救いというかなんというか、桐椰くんは自覚がないから来るもの拒むわけだけど、彼方は全力で女の子を引っかけにいってるんだから……。うんうん、と頷いていると、桐椰くんは遠い目で「あぁ、あのクソ野郎……」と酷い言いようだ。


「お前もアイツにナンパされたんだもんな……。そこまで見境ないとは思ってなかったんだけど……」

「だからそれは私に失礼ですよ!」

「まぁ実際、桜坂をナンパしようとは思わないよね」

「なんてこと言うの!?」

「別に貶してはないよ。ナンパされそうってほうが貶してるしね」


 どれがいいかなー、とペンケースを物色しながら松隆くんは平然と言い放つ。


「ナンパする相手の基準なんて、その場で声かけて付いて来るかだよ? 男に声かけられてほいほいついてくるのなんて頭の悪い女に決まってんじゃん。見た目で分かるくらい馬鹿な女しかナンパなんてしないよ」

「いかにも理知的っつーか、頭回りそうな女は引っかかんねーからな。あと真面目そうなヤツ」

「その点桜坂はねー。学校の様子はともかく、今日みたいな恰好だと声はかけないね。きっぱりはっきり断りそうだし、声掛けた瞬間嫌味百倍返ってきそうな空気感あるし」

「そこまでか? 俺らが性格知ってるからそう思うだけじゃね?」

「ま、ナンパされるイコール魅力的って思ってる女ほど見当違いの考察をしてるヤツが多いって話だよ」

「あー、いるよな、時々。またナンパされたーって言ってるヤツ」

「あれはねー。軽い女というか、その気にさせやすいというか、馬鹿だって思われる見た目なんだってことをアピールしてるだけなんだけど、なんで気付かないかねぇ」

「まぁある意味魅力的であることには違いないだろ。魅力の意味をどう考えるかって話だけど」

「うーわ、お前がそういうこと言うようになったとか。おばさんに知られたら絶対俺のせいだって怒られんじゃん」

「安心しろよ、俺の歪みはコイツも一役買ってるから」


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