第二幕、御三家の嘲笑
 思わず声を荒げて吐き捨てた。丁度この間、松隆くんに怒鳴ってしまったときと同じように、今度は桐椰くんに怒鳴ってしまった。ただ違うのは、今回の私は桐椰くんの返事を待つ気なんてなかったことだ。その隣を通り抜けようとしたのに、掴まれた腕のせいでそれは叶わなかった。


「放してよ、」

「御三家に口出されることじゃないってんなら、御三家とは関係なく俺が聞く。何で鹿島とキスしてんの」


 ……何で、桐椰くんにそんなこと言われなきゃいけないの。


「御三家と関係ないなら尚更言う必要なんてない」

「なんで」

「桐椰くんは私の彼氏でもなんでもない!」

「彼氏じゃないと、そんな顔してるヤツの心配しちゃいけないわけ」


 そんな顔がどんな顔なのか、私には分からない。普段ならそれが桐椰くんの優しさだと純粋に分かるはずなのに、なぜかそれが地雷になった。


「……そうやって心配されたって嬉しくない」

「……何?」


 だって、桐椰くんは違うくせに。鹿島くんと会う直前、電話をしていた桐椰くんの表情を思い出してしまって、完全に理性の糸が切れた。


「私のこと何にも知らないくせに、理解してるフリなんかしないでよ!」


 思わず、その言葉が口をついて出た。自分が何を言ってしまったか分かって我に返ったときには、桐椰くんの顔は悲痛そうに歪んでいた。


「あ……」


 そのせいで、自分の言葉がどれほど鋭利なものとなって桐椰くんを傷つけたのか、分かってしまった。私の腕を掴んでいた桐椰くんの手からは力が抜けている。


「……そうだよ。お前のこと何も知らねーよ、俺は」


 そんなの当たり前だ。だって私は何も話してない。桐椰くんは何も悪くない。


「お前のこと分かりたいから知りたいんだって思ってんじゃん。それじゃ駄目なのかよ」


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