第二幕、御三家の嘲笑
 それから、なんとなく二人でいることが多くなった。本当になんとなくだ。二人共待ち合わせなんてしてなかった。ただ出会すと、ああ、なんて立ち止まる。その程度の関係。


「あのさあ、匠」

「なんだよ」

「……幕張亜季って、お前の妹でも彼女でもなかったんだな」

「そうだって言ってるだろ」

「お前が幕張亜季なんだ」


 バレたのは、いつだったっけ。女子が男子に敵わないことくらい分かってて、それを俊敏さと技と木刀とで誤魔化していた私は、すぐに背中の木刀に手を掛けた。しらをきってやられてしまうより、最初から挑むほうが負ける確率は低いと思ったから。雅のことを信用していたけれど、疑念が芽生えてしまったから。でも雅は何もしなかった。代わりに、学校の外では食事のとき以外外さないマスクを外して、笑った。名乗ったときと同じように。


「良かった。これでまた、お前のことを一つ知れた」


 その日から、幕張匠は独りじゃなくなった。

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