第二幕、御三家の嘲笑
割と普通に常識を疑うよ、と松隆くんはおぞましいものでも見るような目つきで肩を竦めた。そう考えると余計に鹿島くんの目的は謎なのだけれど……。
「そう、だよね……」
「ま、だから遼が怒ったんだとしたら心配だったんじゃないの、とは思うけどね。仮にその光景を見てたら、何してんだコイツ、と思うのが誰であっても素直な感想だよ」
……やっぱり、桐椰くんは私を心配してくれただけだったのか。今になって冷静になれば、そんなことは簡単に分かるはずなのに、なんであんな言い方になっちゃったんだろう。思わず溜息を吐いてしまった。
「で、それはどこの誰? ちゃんとシメとくけど」
「シメるとか言わないでよ怖いから」
「まぁそれで遼と喧嘩になったってんなら、キスされた以上に何かあったのかな? となれば相手もそれなりに絞り込めるね。関係がどうのこうのと言い争いになると考えればお互いの顔見知り……桜坂と遼の共通項は花高の生徒くらいしかないね。菊池はこの間の桜坂の遣り取りを見れば再犯可能性もなし。で、言い争うほどとなれば生徒会役員で」
「ちょ、ちょっと、ストップ」
ぶつぶつと思考を垂れ流す松隆くんに対して思わず立ち止まってストップをかけてしまった。答えに辿り着くのが早すぎる。もしこれでキスの相手が鹿島くんだとばれてしまったら松隆くんにまで関係を聞かれる。それでもって松隆くんは桐椰くんほど甘くない。絶対に、私が襤褸を出す。なんなら今止めたことが正解を意味すると松隆くんには分かってしまったかもしれない。
「あの……、気にしないで、その、大したことじゃなかったから……」
「ふぅん、桜坂にとってはキスされる程度、大したことじゃないんだ?」
襤褸は出さなかった代わりに付け入る隙を与えてしまった。送ってくれてありがたいなんてとんでもない、一人で帰るべきだった、と今更後悔した。
「いえ……、あの」
「だったら、俺とキスできる?」
三度目だなんて関係なく、やっぱり無抵抗に、それどころか今度は肩ごと体を抱き寄せられた。雨に打たれる傘の下、誰にも見えない状態で、体はゼロ距離、唇はきっとほんの一センチの隙間を残して触れ合う寸前だった。松隆くんの冷たい瞳に私が映り込んでいた。
「え……、」
「大したことないなら、俺ともキスできるよね?」
「そう、だよね……」
「ま、だから遼が怒ったんだとしたら心配だったんじゃないの、とは思うけどね。仮にその光景を見てたら、何してんだコイツ、と思うのが誰であっても素直な感想だよ」
……やっぱり、桐椰くんは私を心配してくれただけだったのか。今になって冷静になれば、そんなことは簡単に分かるはずなのに、なんであんな言い方になっちゃったんだろう。思わず溜息を吐いてしまった。
「で、それはどこの誰? ちゃんとシメとくけど」
「シメるとか言わないでよ怖いから」
「まぁそれで遼と喧嘩になったってんなら、キスされた以上に何かあったのかな? となれば相手もそれなりに絞り込めるね。関係がどうのこうのと言い争いになると考えればお互いの顔見知り……桜坂と遼の共通項は花高の生徒くらいしかないね。菊池はこの間の桜坂の遣り取りを見れば再犯可能性もなし。で、言い争うほどとなれば生徒会役員で」
「ちょ、ちょっと、ストップ」
ぶつぶつと思考を垂れ流す松隆くんに対して思わず立ち止まってストップをかけてしまった。答えに辿り着くのが早すぎる。もしこれでキスの相手が鹿島くんだとばれてしまったら松隆くんにまで関係を聞かれる。それでもって松隆くんは桐椰くんほど甘くない。絶対に、私が襤褸を出す。なんなら今止めたことが正解を意味すると松隆くんには分かってしまったかもしれない。
「あの……、気にしないで、その、大したことじゃなかったから……」
「ふぅん、桜坂にとってはキスされる程度、大したことじゃないんだ?」
襤褸は出さなかった代わりに付け入る隙を与えてしまった。送ってくれてありがたいなんてとんでもない、一人で帰るべきだった、と今更後悔した。
「いえ……、あの」
「だったら、俺とキスできる?」
三度目だなんて関係なく、やっぱり無抵抗に、それどころか今度は肩ごと体を抱き寄せられた。雨に打たれる傘の下、誰にも見えない状態で、体はゼロ距離、唇はきっとほんの一センチの隙間を残して触れ合う寸前だった。松隆くんの冷たい瞳に私が映り込んでいた。
「え……、」
「大したことないなら、俺ともキスできるよね?」