第二幕、御三家の嘲笑
「いつも三十番くらいになるように調整してる」

「え、なんでそんなことすんの?」

「一番とっても褒めて貰えなかったから。つか、うざがられたから」

「……ふぅん」

「つか、お前ビリって噂で聞いたんだけど大丈夫なわけ」

「それはちょっと盛られてる。ビリではない。あと中学はビリのままで進級できるって聞いた」

「高校行かねーの」

「うーん、全寮制の高校とかなら行きてー。でもそんなとこ入る頭、俺にないよなー」

「だろうな」

「フォローしろよ。つかこの間の試験で見事に全部一桁の点数記録した! 課題的なの出されたから手伝ってお願い」

「やだよ。なんで俺が」

「親友だろ!」

「外でだけな」


 ケチ!と雅は顔をしかめた。そんなこと言われても手伝う義理がないものはない、そう付け加えてポテトの続きを貪る。やはりハンバーガーまでは要らないと思う。


「ちぇっ。課題出せないと居残りさせられるじゃん」

「しろよ。自業自得だ」

「やだよ。お前に会う時間減るもん」


 次のポテトを摘まもうとした指が一瞬止まってしまった。


「この状態で聞くと、お前完全に男に恋してるな」

「女顔なの気にしてんだよやめろ!」

「そこまで言うなら今度見てやるよ」

「え、マジ?」


 何事もなかったかのようにポテトを食べ続けながら、淡々と平静を装って続ける。


「ポテトのお礼。その代わり場所は提供しろよ。ウチ無理だし」

「俺はいいけど、お前何、俺の家来る予定なの」

「だって外で課題すんの?」

「そりゃそうだけど……もっと他にあるだろ、図書館とか」

「この恰好で図書館行ったら周りの視線が痛くてやってられねーよ」


 地元の中学校の制服を身に着けながら金髪だなんて目立って仕方がない。だから当然の理由なのに、雅は目だけで渋い顔をしてみせる。


「……他人を家に入れたくない気持ちは分かるけど、仕方ないだろ」

「……まぁ、居残り回避とお前に会えるって考えればいいか」

「だからなんなのお前は。男が好きなら他当たって」

「だから違うって! 大体──」


 お前は男じゃないじゃん、とでも言いかけたのだろう。でも事実を口にする前に口を噤んだ。じっと見つめていると、雅は誤魔化すようにポテトの箱を握りつぶし「とにかく!」と私の膝の上にある紙袋を指さした。


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