第二幕、御三家の嘲笑


 雅が出現した次の日、学校で会った桐椰くんの機嫌は猛烈に悪かった。


「おっはよー、桐椰くん」

「朝からうるせぇ」

「え、なに。反抗期? 遅くない?」

「うるせーな!」

「塩対応は月影くんの専売特許だよ。松隆くんも腹黒毒舌だし、桐椰くんくらいは顔真っ赤にして私の一言で怒ったり喚いたり叫んだりしてていいんだよ」

「お前の中の俺、すっげー間抜けだな」


 桐椰くんは私の後ろの席で不機嫌そうに頬杖をついている。六月に入って一度席替えをしたというのに、私と桐椰くんをまとめて隅に追いやりたがった生徒会役員の赤井くんのせいでまた前後だ。しかも細やかな嫌がらせに窓際とはいえ一番前。


「ねー、桐椰くん、何怒ってるの?」

「うるせーな、怒ってねーよ」

「遥くんと喧嘩でもした?」

「しねーよ」

「朝ご飯食べ損ねた?」

「お前俺を何だと思ってんの?」


 チッ、なんて舌打ちは言葉のように大きく響く。桐椰くんの眉間の皺は深い。


「お前の元カレ、マジでうぜーな」

「ああ、雅? どうかしたの、嫉妬?」

「だから! その設定はもういいって言ってんだよ!」

「痛い!」


 筆箱で頭を殴られた。頬を抓る桐椰くんに月影くんが「恋人ごっこの延長か?」なんて鼻で笑いながらコメントしたせいで、最近は暴力が直接的なことが多い。


< 24 / 438 >

この作品をシェア

pagetop