第二幕、御三家の嘲笑

「桜坂」


 その声が聞こえて振り向いた瞬間に抱き寄せられる。驚いて声を上げる間もなく、見慣れた顔が眼前に迫る。


「俺とキスできる?」


 待って、と言う間もなく唇が重なる。思わず目を瞑ればすぐに唇は離れた。


「松隆くん、」

「君が幕張匠だと知られたら、菊池のいい人質になってくれるだろうね」


 キスしていたのは松隆くんだったはずなのに、はっと目を開けば、目の前では鹿島くんが笑っていた。どくん、と恐怖で震えた体は一層強く抱きしめられる。


「分かったら嫌がるのはやめなよ」


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