第二幕、御三家の嘲笑
「貴女、妹さんの水着を借りたって言ったけど、妹さんと似てるの?」

「あぁ、雰囲気とかはあんまり似てないよね」


 松隆くんが余計なことを答えた。


「体型は同じなのかしら?」

「身長は同じくらいだったけど体型は全然」

「チッ」


 今、舌打ちした? どう考えても松隆くんが余計な情報を与えたとしか思えない。訳も分からないまま、よしりんさんに「スマホだせ」と命令され、何故か体が従ってしまった。


「水着売ってる近場調べろ。買うから」

「え……いや、でも私お金そんな持ってな、」

「だから花の女子高生が似合いもしない水着着て海に行くとか万死に値するって言ってんのよ! アタシに慰謝料払いたくなかったらアタシが買う水着着なさい。いいわね?」


 一体何の慰謝料……。似合わない水着を着ることによりよしりんさんに与えるストレスという慰謝料……? もう意味が分からなくて顔がひきつる。松隆くんは「吉野が選ぶなら似合うから良かったね」とか的外れな感想をくれた。恨みがましげに松隆くんを睨むけれど、相変わらず頬杖をついたまま涼しい顔でいるだけだ。


「なに? 俺の趣味のほうがよかった?」

「……松隆くんの趣味、きわどそう」

「総ちゃんは興味ないフリはしないけど平然と見てるわよ、気を付けなさい」

「あー分かるー」

「ちょっと待って、その反応は心外なんだけど」

「駿ちゃんは本当に興味がないからアタシ側かと思っ──」

「違います」


 きっぱりはっきり、その台詞を最後まで言わせる前に月影くんは否定した。敬語だけれど、そういえばよしりんさんは松隆くんと桐椰くんと柔道で一緒だっただけか。BCCで会ったときも月影くんのことは口にしなかったし、御三家の旅行で時々顔を合わせる程度の知り合いなのかもしれない。


「で、遼ちゃんは女の子の前だと反応に困る子」

「あぁ……」

「なんだその憐みの目は。分かってたなら俺に気を遣え、俺に」

「痛い、痛いです、すいません、因みに桐椰くんの好きな水着の色は?」

「だから俺を揶揄うためだけに訊くのはやめろ!」

「要望に応えるなら聞いていいってこと? 桐椰くんってばスケ──痛い!!」


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