第二幕、御三家の嘲笑
「言ってるでしょ、お似合いよ。貴女の計算高さがあれば総ちゃんとやりあえるし」

「やりあえるって……付き合いは戦いじゃないんですから」

「対等じゃないと長続きしないのは同じでしょ。どっちかが勝ってたらいつかどっちかの首が落ちるのよ」


 本当にそれは戦いの話では……。そもそも、私と松隆くんは思考回路や価値観が似ているだけで、対等ではない。


「アタシね、貴女を見た時、正直、遼ちゃんと合わないなって思ったのよ」

「……そんなの、私が一番知ってますよ」

「でしょうね。あの子は不器用すぎるくらい優しいお人好しだし、貴女は優しくないことはないけれどとても合理的な人間だわ。アタシの性別一つとっても、あの子は〝アタシがそうだから〟なんて受け容れ方をする。貴女と総ちゃんとは違うでしょう」


 全くその通りだ。多分、私と松隆くんも〝よしりんさんがそうだから〟という理由で受け容れているけれど、それは桐椰くんとは微妙に違う。言葉で上手く説明することはできないけれど、私と松隆くんはそこに理性が介在している。桐椰くんには感覚しかない。優しくしようと思って優しくするか、何も考えずに優しくするか。蝶乃さんが反発したように、私達と桐椰くんは違う。


「そういう違いは一生違うままだもの。だったら似てる総ちゃんを選べば気は楽よ」

「……ていうか、相手を桐椰くんか松隆くんに限らなくてよくないですか?」


 なぜその前提で話が進むのか。疑問を呈すると、「だって忘れるには手っ取り早い相手がいるんだから選べばいいじゃない」と更に謎の返事が来た。


「忘れる……?」

「BCCのときに好きだった人のこと、少しは整理できたんでしょ」


 ──心臓を鷲掴みにされたような感覚が走る。この感触は、何だろう。緊張ではない。恐怖でもない。それなら、一体何……。


「……なんでそう思うんですか?」

「そういうのは勘よ、勘。昔の恋を大事にとっておくのは他人が口出すことじゃないわ。でも大事にとっておく理由が感情じゃなくて理性にあるならやめなさい。それは相手にも失礼よ」


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