第二幕、御三家の嘲笑
「……そうだろうとは思ってました」


 御三家の誰が私の顔面について密告したのかは分からないけれど(どうせ松隆くんか桐椰くんのどちらかだろうけど)、今後の身の安全のためにこの三日間のどこかで簡単なお化粧方法くらい習おう……。そう決意して目を閉じた。

 お化粧を完了し、サイドを捩じったハーフアップみたいな髪型になって準備完了、別荘の外に出るとその手からは日傘が渡された。


「これは……」

「貴女まさか肌を日差しに晒す気? 正気じゃないわね。紫外線に当たれば当たるほどダメージ受けるのよ。避けなさい」


 もう何も言うまい。渋々ながらも差せば、表は白、裏は黒で、太陽の光が全く透けない完全遮光の日傘だ。絶対いいお値段だと思う。


「ねぇ、桜坂の傘の下、俺もいれてくれない」

「嫌です」


 松隆くんの顔は暑さでげんなりしていたから、多分純粋に日蔭を欲しがっただけだと思う。でも最早近づくのすら怖くて慌ててよしりんさんの隣にピッタリ張りつく羽目になった。その後も、一日乗車券を購入して乗ったバスではすかさずよしりんさんの隣を陣取り、松隆くんとの接触を回避。よしりんさんの呆れた目がサングラスの内側から向けられるけれど仕方がない。神社へ続く階段を上りながらも一生懸命よしりんさんに話しかける。


「よしりんさんよしりんさん、サングラスはお洒落ですか?」

「と言いたいところだけど、残念ながら違うわ。アタシ、色素薄いから眩しくて堪らないのよ。運転中もしてたでしょ」


 そっか、そういえば運転中はずっとこっち見てくれなかったもんな……。一回目が合ったときもルームミラーに目だけが映ってたから、サングラスを一瞬外してくれてたのかも。ただ目の色なんて正確には記憶していなくて、改めて観察すべくじーっと見つめているとひょいとサングラスをずらしてくれた。まじまじと見たことがなかったから気が付かなかったけれど、ブラウンかグリーンか、と思ってしまうくらい薄い色だった。


「よしりんさんってハーフですか?」

「よく言われるけど生粋の日本人よ。昔は嫌だったわよぉ、彫の深いこの顔も含めて」


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