第二幕、御三家の嘲笑
周囲の様子に気を取られて松隆くんへの警戒を怠ってしまった。お陰で変な声を上げてしまうし、気付いたらよしりんさんも私の隣を離れて御神籤売り場にいるし、桐椰くんと月影くんは神社の説明なんて読んでるし……隣にはいつも通りの松隆くんの顔があるし。最悪だ。
「まぁ……その、神様はあんまり信じるタイプじゃないかなーなんて……」
「ふぅん」
「……松隆くんもあんまり信じるタイプじゃなさそう」
「積極的に信じてはないね。こういう場所に来たら一応祈願はするけど」
「松隆くんが祈願する様子、思い浮かばない」
「分かんないよ、桜坂が振り向いてくれますようにって願ってるかもしれないし」
松隆くんは平然と告げたけれど、私は視線を逸らしてしまった。
「……私、言ったじゃん」
「色々言われたけど、どれのこと?」
「……松隆くんのことそういう風に見てないって」
「だから見てくれますようにって言ってるんだけど」
「そんなぐいぐい来ないでくださいよ、リーダー……」
「桜坂は推しに弱そうだから」
「だから旅行嫌だって言ったのに……!」
さっきまで暑い暑いとぼやいていた疲れた顔はどこへやら、松隆くんの笑顔はいつものように腹黒く輝く。そう、桐椰くんと喧嘩するわ、松隆くんにとんでもないことを告げられたわで頭を抱え、取り敢えず旅行はキャンセルしたいと松隆くんに申し出たのだ。それだというのに今私は旅行に来ている。理由は松隆くんが許してくれなかったからだ。「拒否権あんの?」に始まったのはまだいつも通りの冗談で良かったのだけれど、次いで「告白された相手と一緒に旅行とか気まずいもんね」と的確な事実を指摘し、「ちゃんと二人には俺のせいだって伝えるし」と帰り道の出来事を二人にバラすことを仄めかし、「旅行楽しみにしてたのに、残念。言わなきゃよかったね」と罪悪感を抉るときた。最悪だ。本当に最悪だ。
「松隆くん、私を連れてくるためなら手段を選ばないんだから……」
「当たり前だろ、折角好きな子と一つ屋根の下になれるのに」
あああぁぁ! 呼吸をするようにさらりと告げられ、文字通り頭を抱えて叫びだしたい。いつもの自分の思考回路が吹っ飛んでしまう。
「まぁ……その、神様はあんまり信じるタイプじゃないかなーなんて……」
「ふぅん」
「……松隆くんもあんまり信じるタイプじゃなさそう」
「積極的に信じてはないね。こういう場所に来たら一応祈願はするけど」
「松隆くんが祈願する様子、思い浮かばない」
「分かんないよ、桜坂が振り向いてくれますようにって願ってるかもしれないし」
松隆くんは平然と告げたけれど、私は視線を逸らしてしまった。
「……私、言ったじゃん」
「色々言われたけど、どれのこと?」
「……松隆くんのことそういう風に見てないって」
「だから見てくれますようにって言ってるんだけど」
「そんなぐいぐい来ないでくださいよ、リーダー……」
「桜坂は推しに弱そうだから」
「だから旅行嫌だって言ったのに……!」
さっきまで暑い暑いとぼやいていた疲れた顔はどこへやら、松隆くんの笑顔はいつものように腹黒く輝く。そう、桐椰くんと喧嘩するわ、松隆くんにとんでもないことを告げられたわで頭を抱え、取り敢えず旅行はキャンセルしたいと松隆くんに申し出たのだ。それだというのに今私は旅行に来ている。理由は松隆くんが許してくれなかったからだ。「拒否権あんの?」に始まったのはまだいつも通りの冗談で良かったのだけれど、次いで「告白された相手と一緒に旅行とか気まずいもんね」と的確な事実を指摘し、「ちゃんと二人には俺のせいだって伝えるし」と帰り道の出来事を二人にバラすことを仄めかし、「旅行楽しみにしてたのに、残念。言わなきゃよかったね」と罪悪感を抉るときた。最悪だ。本当に最悪だ。
「松隆くん、私を連れてくるためなら手段を選ばないんだから……」
「当たり前だろ、折角好きな子と一つ屋根の下になれるのに」
あああぁぁ! 呼吸をするようにさらりと告げられ、文字通り頭を抱えて叫びだしたい。いつもの自分の思考回路が吹っ飛んでしまう。