第二幕、御三家の嘲笑
「何にでも理由を求める女の子はモテないわよ。大体こういうのは信じることに意味があるんだから。信じて持っておけばきちんと叶うわよ」

「でも天は自ら行動しない者に救いの手を差し伸べないとも言いますよ」

「ちょっと、アタシ無教養だから訳して頂戴」

「シェイクスピアの言葉ですよ。似たような言葉はいくらでもありますけどね」


 よしりんさんが苦虫を噛み潰しながら月影くんに振れば、月影くんが冷ややかな目で御神籤箱を見つめながら答えた。流石秀才、名言ならなんとなく聞いたことがあるだけじゃなくてちゃんと出展も知ってるわけだ。


「まぁお守りを持つって言ってるだけで何もしないって言ってるわけじゃないですし、信じる者は救われるってヤツですね!」

「どんなヤツか知らないけれど取り敢えずつくづく可愛げないわね、貴女」

「褒めてます?」

「どこが褒めてるように聞こえるのよ。耳まで腐ってんの?」

「耳までってことは他にどこが腐ってるんですか……」

「女子力に決まってんでしょ、わざわざ言わせないでよ」


 よしりんさんの容赦ない罵倒を食らっていると、やってきた松隆くんは可笑しそうに笑う。


「ま、シェイクスピアの言葉くらい知ってても損はしないんじゃないの、吉野。話のネタにはなるし」

「張っ倒されたいのかチンチクリン。大体、んな話題を嬉々として持って来るような人間と話をするなんて肩が凝って仕方がないからいいわ」


 桐椰くんと現れた松隆くんが喧嘩を売り、よしりんさんは今度はこめかみに青筋を浮かべる。よしりんさんから見れば大体の人はちんちくりんだから仕方ない。


「全く、遼ちゃん以外は本当可愛げのない子達ね」

「俺も除外しろよ気持ち悪ぃな。つか昼飯どーすんの」

「トリックアート館の隣で食べるわよ。ってわけではい移動、バス逃したら面倒だから」


 まるで引率の先生のようによしりんさんは取り仕切り、松隆くんと桐椰くんが仲良く「はーい」と返事をする。なにこの二人可愛い。よしりんさんと二人は道場で一緒だったみたいだし、小さい頃から面倒を見る見られるの関係だったのかもしれない。

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