第二幕、御三家の嘲笑
「こんなにも体育会系男子が揃ってるんだからあれを敢えて私にさせる必要ないじゃないですか!」

「いいから行きなさいようるさい子ね」


 そしてなぜか私はブランコの絵の前で空気椅子をさせられる。きっと写真の中では諸々が飛び出て見える結果、猿と一緒に大自然のブランコを堪能中、みたいになるんだろうけれど、現実ではただの絵だ。私は空気椅子だ。勘弁してほしい。多分意図的だと思うけれど、「ピントが合わない」という理由で二十秒は空気椅子をさせられた。


「ちょっとちゃんと笑いなさいよ」

「空気椅子しながらそれはさすがにきつくないですか?」

「じゃ、お次は駿ちゃん」


 そして蟹の絵の前に立たされる月影くん。物凄く雑ないじりだ、私と松隆くんと桐椰くんで難しい顔をしてよしりんさんの後ろに立つ。だって蟹が飛び出て見えるだけの絵だ。私達三人と違って絵に合せた典型的なポーズなんてない。一体どうするんだ……、と見守っていると、月影くんは蟹に向けて手を差し出した。私達は思わず硬直してしまう。蟹がそのハサミを差し出すからグーを出す、月影くん。


「やるじゃないの。ほーらアンタ達、ああいうのがノリがいいっていうのよ。……聞いてる?」

「き……聞いてま……す……」


 館内で大声を上げて笑うわけにもいかず、一生懸命笑いを堪えながら息も絶え絶えに返事をする羽目になった。松隆くんと桐椰くんは口元を覆って肩を震わせている。そうやって三人で一生懸命耐えていたのに、よしりんさんに写真──真顔なせいで「蟹にじゃんけんで勝ってちょっと誇らしげな表情」をしているように見える月影くん──を見せられて、桐椰くんが吹き出した。


「駿哉最高じゃん! これマジで面白い!」

「だってこういうものだろう」

「そうなんだけど! 蟹に勝って嬉しそうなお前……!」


 きょとんとする月影くんの顔を直視できない。駄目だ笑ってしまう。正直堪えすぎてもう腹筋が痛い。松隆くんは遂に壁を向いてしまった。よしりんさんは満足そうにうんうん頷く。


「いいわねいいわね。これでこそ旅行に来た甲斐があるってもんよ。で、アタシの写真は?」

「あぁ、んじゃ俺が撮る」


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