第二幕、御三家の嘲笑
「最近松隆くん私に容赦ないからねー。いつ人権奪われるか分からないから、下手なこと聞けないよ」


 桐椰くんに納得の色が浮かばないのでそう付け加えて、あれ、と気が付く。そうだ、クラスマッチの日、松隆くんのお願いを一個聞くって約束したんだっけ。あの約束、松隆くんはどのタイミングで使うつもりなんだろう……。松隆くんと付き合うことを断った罪悪感を利用して旅行に来させたくらいなんだから、付き合うことに使ってもいいのに。勿論断りはするけど、試しにそのカードを切っても損はなかったのでは……。そんな付き合い方に意味がないと思ったか、あまりに横暴と思ったか……。そうなると松隆くんが告白を盾に旅行に連行したのはちょっとだけ変だな、と首を捻ってしまう。同じくらい横暴だと思うのだけれど……。


「あ、そういえば忘れないうちに言っとくけど、今日晩飯終わったら駿哉の誕生日祝うから。晩飯の前に吉野がケーキ取りに行くけど、買い忘れたものがあるって名目で行くからツッコみ入れんなよ」

「あいあいさー。ホールケーキとか予約したの?」

「あぁ」

「月影くんってそういうのにも無表情なイメージがあるんだけど喜ぶの……?」

「意外とああいうの好きだぞアイツ」


 そういえばプレゼント買うときもそんなこと言ってたっけ……。やっぱり月影くんはツンデレだ。


「そういや兄貴が盆に帰省するからお前に会いたいってうるさいんだけど」

「桐椰くんももっと兄を見習って私を褒めてくれていいんだよ?」

「アイツは頭おかしいんだよ」

「本当に似てない兄弟だよね」

「よく言われるよ」


 はーぁ、と桐椰くんは深い溜息を吐く。彼方の歴代の彼女のせいで被った気苦労が目に見えるようだ。


「つか、お前はこういうものに興味ねーの」

「歴史? ないよ」

「にべもないな。ま、女子はこんなもの見ても楽しくねーだろうな。吉野がアクセサリーの館行きたいって行ってたから付き合ってやれば」

「私としてはそういうところには桐椰くんを連れて行って『彼女さんにプレゼントですかー?』って店員さんに聞かれて顔を真っ赤にする桐椰くんを見たいな」

「いつでもお前への怒りで顔は真っ赤だよ」

「あ、痛い痛い、すいません」


 むにっと今日も頬が抓られる。かと思えば「化粧の粉つきそう」と顔をしかめてすぐに離された。理不尽だ。


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