第二幕、御三家の嘲笑
「……いや、今の……、ほら、お前の頭の回転良いなって言っただけだから……」

「桐椰くんって頭の回転がいいことを可愛げって表現するんですね」


 しまった、つい癖で煽ったけれど動揺していたせいで煽る場所を間違えた。追い詰められた桐椰くんの顔がこれ以上ないくらい真っ赤だ。


「ところでみんなとはぐれちゃったので早く行きませんか?」

「言われなくても行くっての!!」


 結局桐椰くんは何も弁解できずに行ってしまった。しまったなぁ……、とその後を追いかけながら自分の頬に触れてみる。やっぱり少し熱かった。桐椰くんのことで妙な入れ知恵をされてさえいなければこんな醜態を晒さずに済んだのに。でも、この反応は松隆くんに言われたときと同じだ。結局、慣れてないから反射で赤くなってしまうだけだ。二人に向ける感情は最初とは変わったけれど、それでも友情には変わりない。私はまだ大丈夫だと、ほっと、安堵した。

 その後も月影くんだけが興味の赴くまま、それ以外の私達は順路通りにタスクをこなすように順繰りに展示物を見て回り、夕方になったところで帰路につく。よしりんさんは別荘に私達を送ると「買い忘れあるから買ってくるわ。総ちゃんカモン」と松隆くんをひきつれて出て行った。因みに松隆くんは舌打ちしたので殴られていた。リーダーが誰かに指図されるのは新鮮だ。その間に私達は夕飯を作る組とお風呂を掃除し沸かす組に分かれる。お風呂を沸かした人は一番風呂に入れるという特権付だ。そんなことはどうでもよく、残った私と桐椰くんと月影くんでじゃんけんをすれば、私と月影くんが夕飯、桐椰くんがお風呂担当になった。


「……これミスじゃね?」


 私にはお風呂場の勝手が分からないので、それは何度かここに来たことがあるという桐椰くんか月影くんが適任ではある。だがしかし。


「確かになんで一番料理できる桐椰くんが料理から外れるのかというのは大いにあるよね」

「だが君は料理も風呂掃除もまともにできなさそうだな」

「じゃあそういう月影くんはどうなんですか!? どーせ料理も理論でしか語れないんじゃないんですか!?」

「残念ながら普通にはできるしカレーくらいなら大した問題もない」

「ぐっ……」

「んじゃ風呂沸かしてる間に手伝ってやるから手は付けとけよ」

「桐椰くん完全に主夫じゃん」

「はいはい」


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