第二幕、御三家の嘲笑
 ただ、私にとっては月影くんと二人というのが一番落ち着く組み合わせだ。料理の効率と出来上がるものがどうなるかはさておき、松隆くんも桐椰くんもキッチンにいないというのはなんとも気楽なものだ。


「さてツッキー、何から始めましょう」

「野菜を切る以外に選択肢が?」

「はいすいません」

「という冗談はさておき」

「冗談だったの? 分かりにくいんだけど?」

「俺は器具を出すから君は野菜を出してくれ」

「はーい」


 まぁそうか……。カレーを作る行程は分からなくもないので、帰り際にスーパーで買った野菜を袋から取り出しながら考える。野菜とお肉を切って炒めて煮込んでルーを溶かして煮込んで完成? あれ、でもお肉と野菜の順序ってどうなんだろう。お肉を切った包丁で野菜を切るわけにはいかないから野菜が先なのかな? でも炒めるのはお肉が先のほうが……。


「ツッキー、やっぱり片方は桐椰くんと変わったほうがいいかな?」

「細かい行程が分からない君の頭の中が見えるような発言だな」

「ツッキーだってどうせそうじゃん!」

「遼と一緒でも気まずくないというのなら俺が変わってもいいが」


 月影くんは月影くんの誕生日プレゼントを買いに行ったときの話は知らないから、桐椰くんの気持ちの話をしてるんだろう。お城見学のときにちょっと困惑したとはいえ基本的に桐椰くんは普通だし、そう取り立てて気まずいわけではないけれど……。


「……ちょっと月影くんにお話しておきたいことがあるのですけど」

「なんだ」


 取り敢えず、松隆くんの所業と鹿島くんの事件は、全てを知っている月影くんに伝えても困ることはない。それどころか鹿島くんの件に関してはこれ以上ない味方になってくれる……かもしれない。


「あのー……ですね……」

「どうせ口にするなら歯切れの悪い物言いをするな」

「はいすいません。……えっと」


 テキパキと調理器具を取り出した月影くんは私と一緒に野菜を切り出す。私がにんじん、月影くんがジャガイモだ。玉ねぎはお互いがお互いに押し付ける魂胆が見えている。負けない。……なんてことはどうでもいい。ごくんと緊張で生唾を呑んだ。思わず野菜を切る手を止めてしまう。


「……その、リーダーに……告白されてしまったのですが……」

「は?」


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