第二幕、御三家の嘲笑
 ほらやっぱり切り上げた! しかも付加疑問ですらない。桐椰くんと私の話に口を挟んでおきながら仕切るその唯我独尊っぷり、そうだよね、王子様は王様の卵だもんね。……納得しかけてしまった自分がいて頭を抱えた。何も納得できない。


「なんでお前が勝手に終わらせてんだ? お前関係ないって言っただろ」


 私としては話を終わらせてほしくはあったけれど、桐椰くんの意見には激しく同意する。


「だから関係あるって言ってるだろ」

「お前昔っからそういうとこあるよな。普段なんでもかんでも他人事で片付けるくせに面白いこと都合の良いことだけ首突っ込みやがって」

「そういうお前は昔っから説教紛いのことばっかり鬱陶しいんだよ」

「お前が自分勝手なことばっかりするからだろ!」


 あぁ、また小学生みたいな喧嘩が始まった……。しかも松隆くんが基本的に面倒事を他人事で放置して面白いことだけ存分に楽しむ様子が目に浮かんでしまう……。そういう態度を桐椰くんが叱ったり諫めたりする態度も目に浮かんでしまう……。因みに一緒に浮かんだ月影くんはきっとそんなときでも隣で本を読んでいるか勉強しているかで我関せずだった。この場を収めるために月影くんを起こすべきかと一瞬本気で考えたけれど、多分「よくあることだから放っておけ」なんて言って無視するに決まってると思うのでその案は却下だ。よしりんさんを起こせばいいかな……でも睡眠不足は美容の大敵とか言って起こしたら怒られそうだな……。大体、こんな喧嘩を高校生になってもするくらいだから、幼い頃から喧嘩といえばこの有様だったに違いない。となれば幼い頃から松隆くんと桐椰くんを知っているよしりんさんも「よくあることだからいーのよ」なんて言って終わらせるかもしれない。そんなことを考えている内に、いつの間にか二人は向かい合って口喧嘩を始めている。松隆くんは腕を組んだまま苛々と指を動かしてるし、桐椰くんは桐椰くんでその口端がぴくぴく震えていて苛立っているのがよく分かる。


「必要最低限の気は遣ってるだろ。お前が細かいんだよ」

「最低限度過ぎるって言ってんだよ。相手が怒る怒らないのギリギリでやってんじゃねーよわざとだろ」

「最低限を見極めてるって言えよ」

「余計なことは面倒臭いって魂胆が透けてんだよ! 心狭すぎんだろお前は!」

< 300 / 438 >

この作品をシェア

pagetop