第二幕、御三家の嘲笑
「お前みたいに寛容になって損するくらいなら狭量って言われるほうがマシ」

「そうやって損得考えるのがケチだって何回言えば分かんだよ!」

「別に友達相手だったらそんなこと思わないからケチじゃないだろ」

「だったらこんなところで出て来るんじゃねーよ空気読め」

「空気読んでたら俺に都合が悪くなりそうだったから出て来たんだよ」

「だからそういうところが我儘だって言ってんだよ! 友達相手なら損得考えないってのはどーした!」

「一個しかないものなら話は別」

「何の話だよ一個って。何回も言うけど面白半分で口挟もうとしてんじゃねーよ」

「面白半分だなんて誰も言ってないだろ」


 弟の説教に疲れたかのように溜息を吐いた桐椰くんの表情は一瞬で固まった。私も固まる。まさか。


「俺、桜坂に告白したから」


 ちょっと待ってリーダー。今しがたコンマ一秒脳裏に過った懸念が現実になってしまって呆然とする。ちょっと、待ってくださいよ、リーダー……。


「……なにそれ、お前何言ってんの」

「言ってる意味分かんない? 俺が桜坂に好きです付き合ってくださいって言ったってことだよ」

「あの……、松隆くん、それ、言わないって約束……」


 桐椰くんが唖然としているけれど、そんなの私だって同じだ。私が旅行を断ったらその話をみんなにするしかないって言うから絶対に気まずいメンバーでも旅行に来たのに。それなのに松隆くんは白々しく首を傾げる。


「したっけ? 桜坂が旅行来ないなら俺が告白したせいだって謝らなきゃいけないって話したら旅行は快諾されたし、桜坂がしてほしいなら俺からしておくよって提案には結構ですって言われたけど、黙っとくって約束はした覚えがないよ」


 しかもいつもの胡散臭い笑顔すらなしに真顔でだ。開いた口が塞がらないけれど松隆くんは何一つ嘘を吐いていないこと、裏を返せば自分が間抜けだったことに腹が立つ。確かにこのクソリーダーは私と何一つ約束していない。絶対に約束しないように気を付けてたに違いない。それでいつかそのカードを桐椰くんの前で切ってやるって思ってんだよね? 虎視眈々とタイミング狙ってたよね!? 本気で最低だこのクソ腹黒リーダー!!

「……お前、それ、いつの話なの?」


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