第二幕、御三家の嘲笑
私が愕然としている内に桐椰くんの空気が変わっていた。今までと同じ声なのに、目の色が変わってる。横顔は無表情。松隆くんも、桐椰くんのことを明確に敵と認識したかのように表情を変えた。ヒヤリと、背筋が震える。
「駿哉の誕生日プレゼント買いに行ってお前と桜坂が喧嘩した後の帰り道」
「……あんな日に告白したわけ?」
「いい加減鹿島にイラついたんだよ。ただでさえ生徒会が桜坂に手を出すからこっちは苛々してるんだ。それなのに生徒会長がわざわざキスするなんて喧嘩売ってるとしか思えないだろ」
「だからそんなことされた日に告白することなんてないだろ。弱ってるところに付け込むような真似すんじゃねーよ」
「本気で言ってる、それ」
「あぁ?」
「本気で桜坂のためだけに俺に怒ってんのかって聞いてるんだよ」
子供の喧嘩に留まらない不穏な空気が流れ始めた。
「俺に先越された、って気持ちはゼロなんだって、胸張って言える?」
その言葉の意味を噛み締めさせるような、その言い方。ぐっと、桐椰くんが口を噤んだ。いつになく高圧的な松隆くんが冷ややかに告げる。
「お前、桜坂が初恋の相手かどうか確かめて、何したかったわけ」
「……それをお前に言う必要ねーだろ」
「まさかただ好奇心として確かめたかったなんて馬鹿な言い訳しないよな? 鹿島のことで弱ってるところに付け込むなって言うなら、解決してないどころか鹿島の真意も何も分かってない今でもそれは同じなんじゃないの?」
何も言い返せない桐椰くんに止めを刺すように、「あのさぁ、遼」と静かな声が冷たく言い放った。
「お前、桜坂が好きなの? それとも、初恋の相手だから桜坂が好きなの?」
──それは、私と桐椰くんの関係を、崩すか結ぶか、ギリギリの問い。桐椰くんが絶句したのは、そんな疑問を抱いたこともなかったからなのか、それとも胸に抱いていた苦悩の核心を突かれてしまったからなのか。
少なくとも、松隆くんにはどちらでも同じだったようで、腹立たし気に吐き捨てる。
「そんな曖昧な気持ちのヤツとなんて勝負する気も起きない。俺は桜坂が好きなんだから」
言葉を失ったままの桐椰くんは、図星をつかれたようにぐっと唇を引き結ぶ。
「……なんでお前なんだよ」
「駿哉の誕生日プレゼント買いに行ってお前と桜坂が喧嘩した後の帰り道」
「……あんな日に告白したわけ?」
「いい加減鹿島にイラついたんだよ。ただでさえ生徒会が桜坂に手を出すからこっちは苛々してるんだ。それなのに生徒会長がわざわざキスするなんて喧嘩売ってるとしか思えないだろ」
「だからそんなことされた日に告白することなんてないだろ。弱ってるところに付け込むような真似すんじゃねーよ」
「本気で言ってる、それ」
「あぁ?」
「本気で桜坂のためだけに俺に怒ってんのかって聞いてるんだよ」
子供の喧嘩に留まらない不穏な空気が流れ始めた。
「俺に先越された、って気持ちはゼロなんだって、胸張って言える?」
その言葉の意味を噛み締めさせるような、その言い方。ぐっと、桐椰くんが口を噤んだ。いつになく高圧的な松隆くんが冷ややかに告げる。
「お前、桜坂が初恋の相手かどうか確かめて、何したかったわけ」
「……それをお前に言う必要ねーだろ」
「まさかただ好奇心として確かめたかったなんて馬鹿な言い訳しないよな? 鹿島のことで弱ってるところに付け込むなって言うなら、解決してないどころか鹿島の真意も何も分かってない今でもそれは同じなんじゃないの?」
何も言い返せない桐椰くんに止めを刺すように、「あのさぁ、遼」と静かな声が冷たく言い放った。
「お前、桜坂が好きなの? それとも、初恋の相手だから桜坂が好きなの?」
──それは、私と桐椰くんの関係を、崩すか結ぶか、ギリギリの問い。桐椰くんが絶句したのは、そんな疑問を抱いたこともなかったからなのか、それとも胸に抱いていた苦悩の核心を突かれてしまったからなのか。
少なくとも、松隆くんにはどちらでも同じだったようで、腹立たし気に吐き捨てる。
「そんな曖昧な気持ちのヤツとなんて勝負する気も起きない。俺は桜坂が好きなんだから」
言葉を失ったままの桐椰くんは、図星をつかれたようにぐっと唇を引き結ぶ。
「……なんでお前なんだよ」