第二幕、御三家の嘲笑

 それでも自分で空気に耐えられなくなったのか、ややあって席を立ち、「散歩」と言い残して部屋を出て行った。リビングの扉が閉められると同時に嫌な沈黙が落ちる。


「で、あれ何よ」

「……犯人は私です」

「そんなことは分かっている。何をしたか聞いているんだ」


 よしりんさんと月影くんの連係プレーだ。しかも月影くんが隣、よしりんさんが前に座っているせいで二方向から尋問されている気分だ。因みに松隆くんと桐椰くんはよしりんさんを挟んで座っていた。よしりんさんは苦労が絶えない。


「えーっと……そのー……」

「早く言え鬱陶しい」

「……昨晩桐椰くんとバルコニーで話してて、桐椰くんの初恋の相手が私じゃないか疑惑がかかってる最中に盗み聞きしてた松隆くんが出て来て告白のことを桐椰くんにバラして、桐椰くんがその理由を問い質してる間に再び松隆くんが……」

「総が?」

「……桐椰くんは初恋の相手が私だと思うから私を好きだって思うだけであって、別に私が好きなわけじゃないんじゃないの、みたいなことを言って桐椰くんの図星指して、終わりました」


 しーん、と再び沈黙が落ちる。今度はよしりんさんが私に向けて「こんなところで何やってんだコイツら」と(さげす)みの目を向けてくる。月影くんも同じくだ。


「俺がいない間に随分楽しそうなことをしていたな」

「にこりとも笑えないんですけど」

「皮肉だが?」

「すいません分かってます」

「いい加減にしてくれないか」

「私のせい?」


 次いで、はぁー、という重い溜息と共に心底迷惑そうな目を向けられた。心外だ。確かに原因は私にもあるけれど責任は私にあるだけではない……はずだ。目だけで反抗していると心は伝わったようで「……確かに総と遼もこんなところで喧嘩することはないな」と眼鏡を押し上げながら同意はしてくれる。


「ですよね!」

「何を俄然勢いづいているんだ。いい加減にしてほしいという心持は全く変わっていないが?」


 それでも全く他人事だと言わんばかりの態度に変わりはない。

< 306 / 438 >

この作品をシェア

pagetop