第二幕、御三家の嘲笑
「ツッキー冷たい……」
「その呼び方はやめろと言ったが?」
「まぁ夏休みのプチ旅行に恋愛が絡まないのも枯れきってて心配になるけど。メンツってものを考えなさいよ。何で一人だけ全く興味なさそうな駿ちゃんを挟んで修羅場作ってんの?」
「意図的に修羅場を作ったのは松隆くんだと思うんですけど……」
「アンタが遼ちゃんと話してるからでしょー」
「夜中ですよ話してたの! しかも待ち合わせでも何でもなくただの偶然! あの車に乗ったらすぐ寝ちゃうまだまだ子供ですみたいな桐椰くんが起き出してくるとは思わないじゃないですか!」
しかもよしりんさんの言葉に従うと、私は桐椰くんと話してはいけないことになる。その理屈はよく分からない。しかも桐椰くんが話してたら松隆くんが出て来るなんて予想外……ってほどではないけれど、少なくとも私に非はない……はず……。
「総は夜型だからな。深夜に起き出してもおかしくない」
「松隆くんに遭遇する時間に起きてる私が悪いんですか?」
「罪な女よねー、男二人誑かしてんのよこの子、こんなガサツな身なりで」
「今私を貶す必要ありました?」
「その点については自分の親友二人の趣味の悪さに驚きを隠せませんね」
「街角インタビュー風に私を貶さないでください」
「だーから言ってるでしょアタシ。総ちゃんと付き合えばいいのにって」
「それは僕が改めて総に反対します」
「つっきーは何なの? 松隆くんのお父さんなの? 松隆くんを嫁に出すくらいの心持なの?」
「ていうか初恋云々のくだり、何よ」
そりゃそうだ、よしりんさんは知る余地もあるまい。桐椰くんが初恋を引き摺ってることは松隆くんが面白半分に話してそうだけれど、その相手がまさか幕張匠に扮していた時の私だとは……。いや、まだ確定事項ではないけれど。
「遼が未練がましく初恋の相手を見つけたいという願望を抱いている話は知っていますか?」
「知ってるわよ」
煽りの強い説明だったけれど、ここは話の腰を折らずにおこう。