第二幕、御三家の嘲笑
そうして、ムードの険悪さは一向に改善される気配のないまま、別荘の真裏にある海へ。本日も夏らしいいい天気で、肌をじりじりと焼く日差しが熱い。よしりんさんに厳重に注意されて日焼け止めを塗りたくりはしたけれど、この天気では効果がなさそうだ。とにかく日蔭を作るべく、よしりんさんの指示のもと、松隆くんと桐椰くんがビーチパラソルを張る。私も駆り出されて月影くんと一緒に椅子を広げる。大きめのパラソルの下にはビニールシートを敷き、ビーチチェアが一つだけ置かれる。アンタら若いからこんなところで寝ないでしょ、というわけだ。私はすかさずビーチチェアに陣取った。
「……ちょっと。アンタなにやってんの」
「私暑いの苦手なので」
「大体そのTシャツなに? 何のためにアタシが水着買ってやったと思ってんの? 五倍の額払わせるわよ」
「えげつないです! 嫌です!」
まずは降りるところから始めろ、とよしりんさんに乱暴に腕を引っ張られ、ぺたんとビニールシートの上に座り込む。よしりんさんはビーチチェアに横向きに座り、腕と足を組み、どっしりと構えて私を見下ろした。
「ほらTシャツ脱ぎなさい」
「え、やだ」
「剥ぐわよ」
「今のよしりんさん男にしか見えないんでやめてください!」
そして今のよしりんさんは、黒い迷彩柄の海パン姿だ。髪は相変わらずうなじの辺りで短く結んであるのはさておき、首から下が完全に男だ。Tシャツ姿で薄々感じていた体の屈強さは予想通り、無駄毛が綺麗に処理されてツルツルな腕と足をどんなに見たって男の腕と足だ。水着の上にTシャツを一枚被っている私を責め立てる様子、セクハラにしかならない。