第二幕、御三家の嘲笑



「あるものは使えって文化祭のときも話したでしょ? 大丈夫大丈夫、遼ちゃんの隣にいる女よりアナタの顔面偏差値のほうが上よ。なんならあの女たちの乳偽物よ」

「いいですよそんな情報くれなくても! ていうか何でこの距離でそんなこと分かるんですか! 大体いま私が桐椰くん助けに行ったら松隆くんと余計に気まずくなるじゃないですか!」

「もう一周回って引っ掻き回すのも楽しいかなって思い始めたわ」

「楽しくないです! 私何にも楽しくないです!」

「取り敢えず背中に日焼け止め塗ってあげるから脱ぎなさいよ」

「たとえよしりんさん相手でもそれ抵抗あるんでイヤです! 自分で塗ったので大丈夫です!」


 嫌だ嫌だと断固拒否をし続けるも、よしりんさんの力に適うわけはなく、敢え無くTシャツは奪われた。奪われた瞬間にせめて前を隠させてくださいと手を伸ばすも、よしりんさんはTシャツを丸めてエナメルバッグの中に押し込んだ。


「あ、あぁ……!」

「遼ちゃんを助けられないなら男でも引っかけてきなさいな」

「寧ろハードル上がってませんかそれ!」

「ちょっと駿ちゃん、女の子が水着姿になってるのよ。何かコメントないの?」


 どう考えても反応に困るしかないコメントを求められた月影くんは、それでもいつも通り平然とした様子で本から顔を上げた。本当に私達をガン無視して読書に入っていたようだ。しかもその顔は無表情どころか全力で「からかうのは遼にすればいいのに」と言っている。ただその桐椰くんは不在なので仕方なさそうに私を一瞥し――一瞬で本に戻った。


「……えっ、何でもいいから言ってよ」

「青色は遼の好きな色だから総が不機嫌にならないように気を付けろ。以上だ」

「何でもいいとは言ったけどそこまでじゃないんだよ! なんで今更そんな情報くれるのかな! もっと事前に言っておいてくれないかな!」


 よしりんさんが厳選した水着は白ベースだ。首の後ろと背中が結ぶ形になっているのに合わせて、 (こちらは飾りに過ぎないけれど)胸元と腰の部分も結べる仕様になっている。それぞれのリボン部分が青色――というか瑠璃色だ。ぐぬぬぬぬ、と唇を引き結ぶ。

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