第二幕、御三家の嘲笑
「松隆くんと桐椰くんは喧嘩するし……月影くんは無視するし、よしりんさんはセクハラするし……!」
「これをセクハラって言うなら水着買いに行った時点で言いなさいよ」
「店員さんに彼氏さんですか?なんて言われたら何も言えないじゃないですか! 彼氏でもないのに水着一緒に見に来てるのって一体何なんだ?ってなっちゃうじゃないですか!」
私に似合う水着を厳選したがった結果、よしりんさんは試着室の前までついてきた。店員さんがちょっとだけ引きつった笑顔で仲が良いんですね、なんて言っていたせいで恥ずかしかった。
「ま、どうでもいいからそのへんほっつき歩いて男引っかけてきなさい。何か一品驕らせたらアタシがアナタに一品驕ってあげるわ」
「だからハードル高いです」
初日の諸々のアドバイスはどこへやら、私を玩具にする気しかないよしりんさんに一生懸命抗っていると、「おい駿哉」と桐椰くんの声が少し離れたところから聞こえてきた。私もつられて顔を上げれば、桐椰くんが戻ってくるところだった。
「なんだ」
「ビーチバレーやんね?」
「暑い」
「夏を根本的に否定してんじゃねぇよ」
「大体誰とするんだ」
「さっき話してたら誘われたから」
桐椰くんが示すほうには大学生っぽい男の人が二人いた。最初桐椰くんと話していた女の人もいる。桐椰くんの顔はまだ少し赤かった。
「トーナメント的なのやってんだって。欠員出たからやんねーかって誘われてた」
「総とやればいいだろう」
「……何でアイツと」
「寧ろ何故総とはしないんだ」
「……なんとなく」
子供か! 不貞腐れたように口を尖らせる桐椰くんに向かってそう心で叫んだのは絶対に私だけじゃない。月影くんは取り敢えず本を閉じた。