第二幕、御三家の嘲笑
「まぁ海に入るよりいいが……」
「んじゃ来いよ。吉野も、増える分には歓迎されると思うぜ?」
「アタシは別にいーけど。じゃあアナタ、アタシと組んで出る?」
なぜか私まで巻き添えにされた。えー、と嫌そうな顔をするとよしりんさんも顔をしかめる。
「何よ、折角誘ってあげたのに」
「よしりんさん運動神経良さそうですけど、私特別良いわけじゃないんで、足手まといになるなーって」
「女の子はそのくらいが可愛いんだからいいのよ」
「女いねーからやめとけば」
が、桐椰くんが却下した。らしくない物言いのせいで思わずその顔を凝視する。でも桐椰くんの目はこちらを向かない。
「……そんな言い方しないでもいいじゃん」
「気遣ってんだろ俺は」
「ナンパされて慌ててたくせに」
「それは関係ねーだろ!」
「ほらまた赤くなったー。桐椰くんのくせに私に指図するとか生意気だー」
投げやりな言い方でも煽れば桐椰くんの頬はいつも通りひきつる。ぷいっとそっぽを向いて見せれば、まぁまぁ、なんて宥める声が背後から聞こえて、ついでに肩を組まれた。
「分かってないわねー。男の前で水着姿晒すのやめたほうがいいって遠回しに言ってんのよ。ね、遼ちゃん」
「うるせーぞ吉野!!」
なるほど、変な目で見られないための気遣いでしたか。顔を真っ赤にした桐椰くんは確かに未だ私と目を合わせてくれていなくて、一瞬だけ私を見ると怒ったように着ていたパーカーを脱いで投げつけてきた。