第二幕、御三家の嘲笑



「……ねぇ桐椰くん」

「なんだよ」

「……松隆くんと仲直りしたら?」

「別に喧嘩してねーよ」


 してるじゃん! そんなところ見栄はらなくていいじゃん!


「……昨日の夜のことは、」

「だから喧嘩してねーよ、うるせーな」


 ……本当にもう何もしてやらないぞ。心で文句を言う。元凶の私が偉そうに言うのもなんだけど。

 松隆くんの試合が始まると、胡坐をかいていた桐椰くんはその膝に肘をのせて頬杖をついた。左肩ごしに私をちょっとだけ振り向く。


「……お前、何で上羽織ってねーの」

「え?」

「羽織れって言ったじゃん」


 あぁ、さっき渡されたパーカーのことか……。言われていることについて思い至りはしたけれど、いま桐椰くんのパーカー借りてたら余計にややこしいことになるじゃん、とは言えなかった。


「……砂で汚れたら悪いし」

「だったら最初着てたTシャツ着たままでよかっただろ」

「よしりんさんが許してくれなかったんだもん」

「……あっそ」


 桐椰くんはコートに視線を戻す。よしりんさんのスマッシュでボールは砂浜に激突した。「避けんなよ!」「あんなもん取ったら腕痛ぇよ!」と相手チームから喚き声が聞こえる。よしりんさんはやっぱり男性なんだな。


「……うろつくときはちゃんと上着ろよ」

「え、なんで?」


 私も試合に視線を戻したし、話は終わったとばかり思っていのに、わざわざ畳み掛けられて、あまり考えずに聞き返してしまった。

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