第二幕、御三家の嘲笑



「いいもん一人で行くもん」

「駿哉付いていけよ」

「心配ならお前が行けばいい。俺は桜坂が一人で歩いていても声はかけない」

「月影くんいい加減私に失礼だよ!」

「じゃあ俺が一緒に行く」

「やだ」

「は?」


 渋々、といった様子で桐椰くんが立ち上がるので、その言葉を言い終える前に言い放ってやった。桐椰くんが間抜けな顔して、立ち上がった私を見上げてくる。ぷいっとそっぽを向いた。


「桐椰くんはやだ」

「やだってお前……ナンパされたらどーすんだって心配してやってんだろ!」

「されないってツッキーも言ったもん」

「コイツはお前の性格ありきで言ってんだよ! コイツに言わせれば仮にお前が美人でもナンパされないことになるんだよ!」

「あぁうん、仮にね」


 冷ややかに返せば、しまった、と桐椰くんの表情が凍りついた。桐椰くんが私の顔面偏差値をどう捉えているか分かった。月影くんが馬鹿め、と言いたげな目を桐椰くんに向けているけれど、月影くんはいつだって私の顔の顔面偏差値を貶しているのでそんな目をする権利はないはずだ。


「美人じゃないからナンパされません。大丈夫です安心してください」

「いや……、その、悪かったって……」

「謝るところに絶妙に本音が出てるの正直でいいと思うよ」

「抜け目なく責め立てんじゃねーよ!」

「責められるようなこと言うからじゃーん。桐椰くんのばーか」


 本当に一人で行こう、と小銭入れ片手に歩き出せば、「待てって」と桐椰くんが追いかけてきた。本当に保護者だなあの不良くん。無視して歩くけれど、桐椰くんのほうが背が高くて足が長いのですぐに追いつかれる。

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