第二幕、御三家の嘲笑



 松隆くんの笑顔が上手なのは、こういうのに慣れてるからなのか。


「話戻っちゃうけど、変に暗い道とかに入らなきゃ大丈夫だからねー。お祭りも楽しんでってね」

「あ、はい……」

「ねね、話戻るけどさ、あの三人の誰とも付き合ってないってことはアキちゃんは彼氏いるの?」

「いないですよ」


 視界の端にちらちらと桐椰くんが映る。お兄さん達との話に夢中になっているから聞いてないだろうとは思うものの、二重の意味で顔が引きつった。なんで女の人ってこの手の話題が好きなんだろうな……。


「えー勿体ない! アキちゃん可愛いのに! これだって本物でしょ!?」


 なんでよしりんさんにしたってこの人達にしたって人の体の一部を本物だの偽物だの言うのだろう……。


「じゃあ彼氏いたことは?」

「いたことはまぁ……」

「まだ引き摺ってるとか?」

「そんな感じです。お姉さん達はいらっしゃるんですか?」

「アタシはいないんだよねー。コイツは遼くんの隣にいる色黒と付き合ってるのよ」


 下手に返事しかしないと次々と質問を投げかけられかねない、というわけで質問を繰り出せば、食いつけそうなネタを貰えた。桐椰くんの隣にいるお兄さんは確かにしっかり黒く焼けていて、色白の桐椰くんの隣だと余計にそれが目立った。焦げ茶色の髪を短く整えていて清潔感のある人だった。


「いつからですか?」

「えー、高校からだからかれこれ三年?」

「長いよねー。よくそんな続くわ」

「秘訣みたいなのあるんです?」

「や、よく分かんないけど……ていうかそれよりアキちゃんの話じゃない?」


 一生懸命逸らし続けてたのに……。ショートボブのお姉さんが彼氏の話をしたがらないのはちょっとした計算ミスだ。

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