第二幕、御三家の嘲笑



「そして私のイチオシは男心も女心も完璧に掌握してるよしりんオネェ様です」

「あーっやっぱオネェか!」


 そのお姉さん達が一斉に頭を抱えて残念そうな悲鳴を上げた。やっぱ、ということはよしりんさんの話し声を聞いてしまっていたのだろう。


「なんか聞こえてたんだよねー、声と台詞が合わない話し声……しかもよしりんかぁ……」

「年的にも一番狙い目だったのに……まさかの恋愛対象に入れてもらえないときたか……」


 よしりんさん、「実は女もいけるわよ」なんて言ってた気がするけど、本当のところはどうなんだろう。少なくとも年下は恋愛対象外だというのは確かだけれど、このお姉さん達にわざわざそんな釘を刺すような真似をする必要はないし、黙っておこう。

 そんな雑談に興じている間によしりんさん松隆くんペアが勝利し、話題のオネェさんは「あー疲れた」と逞しく腕を回しながら帰って来た。対戦相手だったお兄さん達は「やっぱ現役には適わねーわー」と笑っている。よしりんさんが自分の年をどう思っているのか不明なので、何の現役なのかは触れずにおこう。


「遼、お前と俺達ラスト試合」

「飛び入り参加で勝ってんじゃねーよ空気読めよ」

「だったらお前が負ければよかっただろ」

「勝ったんだから仕方ねーだろ」

「だから負けろって言ってんだよ日本語通じないのかお前は」


 また松隆くんと桐椰くんがくだらない喧嘩を……。二人の間でバチバチとよく分からない火花が散っている。


「遼くんとマッツーって喧嘩してるの?」

「……そうですね。夕飯のおかずを松隆くんが桐椰くんより一個多く食べたみたいな感じです」


 お姉さん達はそんなまさか小学生みたいな、と笑っているけれど実際そんな感じだ。多分小さい頃は実際にそういう喧嘩してたんだろうな。絶対松隆くんが桐椰くんの天ぷら勝手に食べたりとかしてたんだろうな。桐椰くんは怒ってそれでも許してあげてたんだろうな。月影くんは偶に自分の天ぷらを半分あげて宥めたりとかしてたのかな。あるとしても間違いなく偶にだな。

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