第二幕、御三家の嘲笑



 暑そうな松隆くんは「おい吉野、連続でできる?」「誰に口きいてんの、できるわよ」なんて掛け合っていてよしりんさんといいコンビだった。桐椰くんは空気を読めだのなんだの言ってたけれど、大学生のお兄さん達は桐椰くん達を見ているだけでも楽しそうだったし、「煙草やめよっかなー」なんて空を仰ぐ人もいる始末だから、どうやら高校生のときに比べて体力がなくなっているらしく、休憩できて丁度いいくらいの様子だった。でも大学生って二十歳前後だろうし、よしりんさんのほうがずっと上なのでは……。そんなことはさておき、コート一面の顔面偏差値が大変なことになってしまったので、元々グループにいたお姉さん達だけではなく、通りすがりのお姉さん達まで立ち止まる始末で騒がしくなってきた。あぁ、御三家ってどこにいっても御三家なんだな。

 今まではセルフジャッジだったのが、最後くらいはと大学生のお兄さん達の一人が審判を買って出た。相変わらず桐椰くんは運動神経抜群の動きをしてみせるし、松隆くんは抜け目なくコースを狙うし。よしりんさんは割と早めにバテ始めたのに「おいおっさん頑張って」「次それ言ったら襲うわよ」「平気だって言ったくせに」「遼ちゃんいるだけでこんなに消耗するとは思わなかったわよ!」と松隆くんと元気にふざけている。桐椰くん側は月影くんがあまり喋らないので静かだ。


「……なんかすいません、あの人達が乗っ取っちゃって」

「いーのいーの、イケメン見てる方が目の保養になるし」

「んなこと言ったら俺達だってアキちゃん見てるほうがいいっての」

「うわー、セクハラじゃん。犯罪者一歩手前じゃん」


 お兄さん達の言葉に反応したショートボブのお姉さんが庇うように私の身体を抱え込む。スキンシップの激しい人だ。それこそセクハラじゃん、と阪口さんが笑っていた。


「さっき聞いてたけど、アキちゃん本当にあの三人の誰とも付き合ってないの?」

「予定さえないですね」

「じゃー俺とは?」

「ないですね」


 どう考えても冗談交じりだったので即答すれば、かわいそー、阪口フラれた、とお姉さん達が笑う。

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