第二幕、御三家の嘲笑



「えー、折角好みだって言ってもらえたのに」

「うーん、確かにお兄さん達の中では一番好みです」

「人生初モテキ来てるかもしれない」

「来てねーよ、女子高生に遊ばれてんじゃねーよ」

「いやー、でもアキちゃん可愛いからなー、ねぇ俺は? 俺は駄目?」

「えっと、」


 私との間に阪口さんを挟む形で座っていたお兄さんが自分を示しながら前のめりになった。駄目ですね、と一言で返そうとしたとき――バコンッとバレーボールが阪口さんの爪先近くに激突した。デジャヴだ。今日はデジャヴが多い。眼鏡まで砂が飛んできた阪口さんは何も悪くないのに硬直している。無論隣のお兄さんも硬直している。歩み寄って来た松隆くんは悪魔の笑みを浮かべた。


「すいません、気が散ったもので、つい」


 気が散ったって、集中してなくたって普通に試合やってたら私が見えるわけないじゃないですかリーダー。その笑顔怖いよリーダー……。松隆くんがボールを拾い上げると同時に、阪口さんともう一人のお兄さんが私から一メートルくらい離れた。私から離れずに済むお姉さん達は目を爛々と光らせて私の顔を覗き込む。


「ねぇ、何もないの? どう見てもあれ彼女に近寄る男を問答無用で死刑に処す彼氏の図だったんだけど?」

「何もないですね……」


 桐椰くんは松隆くんと喧嘩してるからやっただけだけど、ここにいるお兄さん達関係ないんだから何もしなくていいじゃないですかリーダー……。心で泣くけれど何も伝わらないし今更伝わったところで意味はない。なんなら試合に戻った松隆くんは、余計なことしやがってとばかりに桐椰くんの反撃を食らっていた。面倒な状況だ面倒な状況だとは感じているけれど、日を重ねるにつれてその状況は更に面倒になっている。

 そんな状況は、松隆くんとよしりんさんのペアが桐椰くんと月影くんのペアに負けたことによって更に加速した。その後の遊び自体は、回復したお兄さん達が再び参戦してトーナメント関係なく試合をしていたし、遅いお昼はバレーが楽しかったからとかいう理由でお兄さん達が海の家で私達にご馳走してくれたし (ただしよしりんさんは逆に多めお金を出してて男前だった)、お兄さん達と別れた後は海に浮かんでのんびりしたし、よしりんさんに海に投げられたし、午後が平穏に終了した、のだが。

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